出版社内容情報
鴻門の会、背水の陣、垓下の戦い。広大で辺際無き中国の天地に織りなされる英雄豪傑たちの果しない夢と野望。史記の世界を甦らせ、血沸き肉躍る中国歴史小説の傑作
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イプシロン
26
秦の悪政に憤る諸侯。英雄豪傑紛々たるが、天命は項羽と劉邦に降る。その二人と君臣たちが知と武で鎬を削り、ついに劉邦が覇者となり漢を勃す。善政を敷いた漢だが、内優は倦むばかり。劉邦亡きあと中国三大悪女の一人、呂太后が権勢を振るう。滑舌よく、人間のもつ善悪、心の機微を活写してゆく海音寺の筆は冴え、呂太后を悪罵する辺りは抱腹絶倒もの。項羽と劉邦を並べ、項羽はまだ31歳だよ。世間知で劉邦に及ぶわけがないという情愛を示す海音寺の筆は温かい。天下泰平とは武文の親近に鍵あり、それは男女の仁でもあるという。蘊蓄多含の良書。2015/12/07
とみやん📖
18
時代がかった著者の名前は聞いたことがあったが、作品は初めて読んだ。このところマイブームになっている中国古代シリーズの一つ。中学生位に読んだ「項羽と劉邦」をなぞるような内容だが、劉邦死後の呂太后の時代のことは初めて詳しく知った。簫何はしぶとく宰相として残っていたことは知っていたが、張良もさすが強か。陳平と周勃も。しかし、古代中国は、骨肉相食む、血みどろの歴史が多く、人間不信になりそう。著者の感想が随時に出てくるのが、手塚治虫的で却って斬新。2020/04/05
73番目の密室
8
日本文化の基礎となっている中国故事を広めようという大家の野心のもとに書かれたオムニバス的中国史小説。といっても上巻は殆ど『項羽と劉邦』の物語に割かれ、最後に時代を遡って斉の桓公が描かれるという構成。読者の興味を引きやすい楚漢の攻防をまず書いてつかみを成功させようという意図だったようだが、今も昔も中国ものを売り込む苦労が窺える。大時代的な言い回しが多く、読了に思った以上に時間がかかってしまった。『天と地と』や『孫子』はもっとすんなり読めた気がするのだが…しかし中国史の妙味を掻い摘んで紹介されるとやはり面白い2018/05/31
フーミン
2
秦末~漢の英雄・知将たちの数珠つなぎを楽しめました。口語がくだけた感じでおもしろく、歴史列伝の堅苦しさがありませんでした。昼休みに読んでいましたが、お昼寝前に最適な一冊と思います。2010/07/01
イエテイ
1
始皇帝後~項羽と劉邦~呂氏滅亡のあと春秋時代へ戻る。史実を分かりやすく書き進め、時折作者の注釈が入る。2019/10/13