出版社内容情報
小説『深い河』と神について、医療への提言、故郷、神戸を襲った大震災、若い人への叱咤……。病と闘いつつ書かれた最後の随想集
内容説明
辛く苦しい病との闘いを続けながらも、遠藤さんは最後まで社会と人間への旺盛な好奇心を持ち続けた。宗教のあり方、医療への提言、若い人たちへの叱咤と激励、神戸を破壊した大震災について…。現代日本が抱える様々な問題への鋭い批評は、遠藤さんが私たち日本人に最後に遺した言葉と言えよう。
目次
医者ゆえの迷信
看護婦さんにもっと光を
失われた正月風景
癌=手術の定説を覆す
「看護する悦び」とは
企業進出と米の反日感情
視聴率より“感動”を
羨ましい死にかた
若ノ花の披露宴
もう目くじら立てまい〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
koushi
13
遠藤先生の絶筆となった随筆集。病魔と闘い、命を削りながらの執筆だったようです。遠藤先生の命の時計が三時をまわり夕暮れ時を指している時、私は当時大学生で遠藤作品は好んで読んでいました。とても懐かしく感慨深い思いです。遠藤周作を何故か遠藤先生と言いたくなるのも学生の頃の読書にあるようです。私の時計は今何時を指しているのだろうか。2014/12/04
kana
11
遠藤周作の最後の随筆集。医療体制、政治、メディアなどの行く末を憂う話題が多い。『わたしが・棄てた・女』がミュージカル化された音楽座の『泣かないで』や、映画『深い河』が絶賛されているので観てみたいと思った。永井荷風が「本人が留守と言っているのだから留守なんだ」と、自分が対面しながら居留守をするエピソードが面白すぎる。2023/06/06
奏市
11
続けて遠藤先生の新聞連載のエッセイを読んだ。晩年の93〜95年に書かれたもの。死、戦争、医療・看護師、政治不信といったテーマが多い。吉行淳之介さんの死に際しての感情の吐露がじんときた。本当に仲良かったんだな。吉行さんのエピソードが気障なのに絵になってて感嘆した。懇意にしてるホステスの誕生日に店に著者連れ立っていく途中、彼女にプレゼントを買った。店に入って普通に飲んでてプレゼントなかなか渡さないから忘れたのかと思っていたら、店出て階段登っている時に「そういえば今日誕生日だったね」と素っ気なく渡したとのこと。2021/06/05
ちゃんむねZWSN
4
遠藤周作氏の最後のエッセイ集。話題の中心は彼の故郷・神戸を襲った阪神大震災や、医療現場の切実な実態、政治の無策への嘆息、マスコミの劣化への苦言・・遠藤氏らしい肩肘張らぬ文体の中にも、重い病をおしての執筆だったからか、何か日本人に宛てた危急の遺言のようにも見えた・・彼がこの優しくも厳しめのエッセイを通して「日本人よ、忘れてくれるな」そう伝えたかった思いとは何だったのか・・現実を目の当たりに手をこまねいている間に、僕の人生の「花時計」も、暖かい昼下がりから、いつしか肌寒い風が吹く夕方へと向かっていました。2017/09/09
ライム
3
病気が多く何回も入院生活を体験し、本書執筆中も闘病中だった著者。読後印象に残るのは、病と死についてで、若い頃の友人たちの死「あいつも去りこいつも亡くなり」特に、長い付き合いの吉行氏に対した病院の不親切な対応への愚痴には、共感します。一方で、看護師達の使命感に燃えた働きぶりは大絶賛…「不幸と病気は突如として背中から切りつけてくる」患者の眼からすれば、天使に見えたと。辛い闘病中でも新聞の連載小説を書いていた著者も、驚嘆すべき働き者だと感じ、大いに敬意を表します。2024/10/19
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