出版社内容情報
お市から淀の方へ、母娘二代にわたる秀吉への復讐劇、そして春日局、桂昌院ら大奥の女たちの哀しみ……。著者晩年の歴史大河小説
内容説明
男の戦は弓矢で争うが、女の戦は才覚一つで、夜毎、じわじわ駒を進める―。浅井長政、柴田勝家、二人の夫を奪われ、落城の炎の中に自害を遂げたお市。そして母の怨念を胸に、秀吉に対する「血の復讐」を着々と果たす淀。母娘二代にわたる凄絶な女の戦の行方、果してその真の勝者は?病魔と闘いながら描いた、著者最後の歴史小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
taku
22
秀吉が信長に仕えてから死後まで足早に流れていく。女性からみた天下動乱というのが面白い。女の戦いは知恵才覚をもって致す。お市から茶々へ受け継がれる、美しき親子の復讐の念。それは矢となり天下人にも届きうるか。ついに成就するが、権謀術数、策士家康が迫る。ここまでが上巻。秀吉が立身出世していく過程で、何度か「男には―」で始まる文が出てくる。まとめると「辛くても耐えて我武者羅に働かなければならない時期がある。正念場を切り抜けて大きくなる」ということなんだけど、ここはウンウンと頷くように読んだのであった。2016/08/07
AKI
13
織田信長の妹のお市からその娘の茶々までをやや駆け足気味で描く上巻でした。お市の方も茶々も浅井家の復讐にとらわれすぎていて憐れでした。茶々が両親の仇である秀吉の側室になり、秀吉の事をどう思っていたのかは、当時の女性の心情が分かる文献が少なすぎる為、想像するしかないのですよね。2020/02/09
okaching
3
さすがの遠藤周作。面白い。当時の人たちが死についてどんな感覚があったのか興味がわく。死への恐怖感情は無かったのかと思わせられる。そして、信長はやはり好きになれない。2014/05/02
司馬太郎
2
戦国時代をお市と茶々の目線から描いた歴史もの。出てくるエピソードは定番で淡々と時代が進んでいくだけのお話なのだが、結構面白いから不思議。遠藤周作の筆力はさすがです。2017/04/14
ワッツ
2
戦国一の出世頭秀吉への親子二代にわたる復讐劇。お市から愛する夫を奪った兄信長と秀吉への恨み。兄への恨みは晴らせたが、秀吉はうまく立ち回り天下を獲る。恨みは娘の茶々へ受け継がれる。運命とは不思議なもので、茶々はそんな憎い秀吉の側室となりやがて秀頼を生む。女の複雑な心理を見事に描いた傑作。著者は女を書くのが苦手と常々言っていたが、なかなかどうして、晩年にあってはそれを乗り越えた境地に至ったのではなかろうか。2015/02/05