内容説明
甲州・信州の全域をわがものとして、さらに駿河府中をおさえた信玄は、いよいよ京都にのぼろうとするが、織田信長に先をこされてしまい焦るばかりだ。その上、年来の病いが身をしばりつける。合理的な戦術によって、合戦に転機をもたらした名将・武田信玄の生涯を描いた長篇三千枚がいよいよ完結する第四巻。
著者等紹介
新田次郎[ニッタジロウ]
明治45(1912)年長野県生れ。本名藤原寛人。無線電信講習所(現在電気通信大学)卒業。昭和31(1956)年「強力伝」にて第34回直木賞受賞。41年永年勤続した気象庁を退職。49年「武田信玄」などの作品により第8回吉川英治文学賞受賞。55年2月没
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感想・レビュー
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W-G
360
感無量の最終巻。さすがに四巻分のボリュームをこなすと、信玄の最期への思いもひとしお。最終巻にして、ハイライトともいえる三方ヶ原の合戦が存分に描かれる。家康に桶狭間を連想させるくだりは上手く描いてリンクさせたなと思った。そしてまた謙信がちらっと出てくるものの、全体通してもっとライバル感というか、あってもよかったようにも感じた。良くも悪くも謙信の描写が幼い印象は拭えない。なにより一番後悔したのは『武田勝頼』を先に読んでしまったこと。この読了の余韻を引き摺ったまま、武田家滅亡の書に入っていきたかった。2018/10/16
s-kozy
70
まさに「巨星墜つ」。西上の望みは叶わず。無念だった。天下統一には機を得ることも必要だったんだなぁ。信玄が次代の勝頼のために真田喜兵衛昌幸を重用し始める、この先見の明があるところがなんとも凄い。信玄が戦国の覇者になったらどんな日本になったんだろうなぁ。2019/02/07
NAO
56
この巻では、念願の水軍を得、勝頼を躑躅ヶ崎館に迎え入れ、京都を目指す信玄殿の智が冴えまくる。この時代は、情報戦でもあり、間者たちがどれだけの情報を持ち込むか、その情報をいかに分析するかが勝敗を大きく左右した。上杉や朝倉の動き、京都周辺の動向には信玄の影響が多大にあったという。(事実かフィクションはかよく分からないが)信玄は、彼自身優れた戦略家だったが、家来の話をよく聞き、間者たちを上手に使い、その功績を正しく評価した。それこそが信玄の最大の強みだったのかもしれない。2025/07/03
抹茶モナカ
49
武田信玄の西上の野望。織田信長の台頭により、戦国時代の様相も変わりつつあった。そんな中、信玄の戦のクライマックスとも言える三方ヶ原の戦いが起こる。歴史小説の苦手な僕は、とにかく、コツコツ読んだ。かなり、つらい読書体験だったけど、いつか、今回の読書が知識として血肉となれば、と、思う。読了後の充実感は凄い。2016/04/03
Haru
42
まさに巨星堕つ。この巻は最期が分かっているだけに、信玄公が西上を語るたびに切なくなり、なかなか読み進められませんでした。京都に武田菱の旗を立てるところが見たかった!存命中の家臣の裏切りは一度もなく、常に冷静沈着、知略に富み、合理的で柔軟性もある。上杉謙信との関係も、北条氏康との関係も、相手が信玄公だからこその付き合いが何とも魅力的でした。歴史にIfはないけれど、天下を恐怖で支配した信長の代わりに信玄公が治めていたら、どのような世になっていたんだろう。お館様が勝てなかったのは、たったひとつ、病だけだった。2017/04/06
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- 和書
- 三年身篭る 文春文庫