内容説明
朝霧にかすむ大川に無人の釣舟が浮んでいた。やがて二人の男の水死体が流れ着く。川底にあった豪華な女ものの煙管は?反骨の岡っ引藤兵衛にのしかかる圧力の正体は?藤兵衛を助ける颯爽の旗本釜木進一郎、足をひっぱる悪同心、無気味な寺僧や大奥の女たちを配して江戸を舞台にくりひろげる長篇時代推理。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909(明治42)年12月、福岡県企救郡板櫃村(現・北九州市)に生れる。53(昭和28)年「或る『小倉日記』伝」で第28回芥川賞を受賞。56年、それまで勤めていた朝日新聞社広告部を退職し、作家生活に入る。63年「日本の黒い霧」などの業績により第5回日本ジャーナリスト会議賞受賞。67年第1回吉川英治文学賞受賞。70年第18回菊池寛賞、90年朝日賞受賞
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感想・レビュー
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いつでも母さん
117
松本清張の時代小説は初めて読んだ様な気がする。時代背景と云い登場人物や人間関係等、流石に巧い。十手を返しても事件を追う親分・藤兵衛と協力者の旗本・釜木が好い。十手を返させた同心の動きが敵役として憎いのだが、本当の悪は大物が控えていたー無人の釣り船や乗っていた二人が死体となって流れ着く事が何処へどう繋がるのか、かなり前の作品なのだが、最後まで飽きさせずに読ませてくれる。なるほどいろんな奴らの思惑が鬼火となっていたのだなぁ。2017/12/26
NAO
76
松本清張の時代劇ミステリ。岡っ引きが溺死事件を調べていたところ、突然上司の北町の定町廻同心の態度が激変。権力をかさに着た巨悪のやりたい放題。その身勝手さにへつらう者と、正義をまっとうしようとする者。悪の構図は、昔も今も変わらない。2019/08/15
しんた
9
かげろう絵図で勢いつけて読んだ。夜のジョギングコースだった向島、蔵前、両国沿いの隅田川にドザエもんが多く流れ着いていた事に戦慄。著者の刑事ものを岡っ引きに差し替えただけの気がするが、まあ面白かった。2015/08/13
タツ フカガワ
4
隅田川で町人ふたりの水死体が発見される。探索に当たったのは駒形の御用聞き藤兵衛。まもなく事件の影に、幕閣にも大きな影響力を持つ中野碩翁の名が上がるが、同じころ八丁堀の同心から探索中止を命じられる。『かげろう絵図』で大奥を舞台にとてつもない陰謀を企んみ、その巨魁ぶりがやたら魅力的だった中野石翁が登場するが、本書はサスペンス&ミステリー度が濃く、一気に読み終えました。今回は悪役同心、川島正三郎がすごくいい。2016/10/31
ちゃかぱん
4
終章の語りによる唐突な謎説きに疑問を感じたものの、解説を読み納得。といっても半七捕物帳は未読なのでわからない。2015/08/07