出版社内容情報
官途に精励し、軍医総監まで昇りつめた鴎外。飽くなき創作意欲で文豪の名を恣にする鴎外。二つの像を独自の視座から照射する評伝
内容説明
鴎外がただ一度訪れた祖父白仙の墓から、敬愛する作家の軌跡を辿る旅は始まった。鴎外はなぜ離婚を機に破門されたはずの西周の評伝を引き受けたのか。晩年の大作史伝「澀江抽斎」「伊沢蘭軒」はどのように創作されたものなのか。研究家の触れるところ少ない謎の部分に、独自の視座から光を当てた遺作評伝。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キムチ
54
読むんじゃなかった・・鴎外の史伝作品への思い入れはある意味傲慢さが鼻に着くほど伝わってくるが。明治期旧帝大出身者は150%こんなものだったろうとは認識している。一回目の結婚から始まり「妻女、姑、嫁の実家。。」くんずほぐれつ。真ん中は西周との確執やら延々と資料を用いて綴る。後半3割は澁江抽齋に取り組んだ鴎外の拘り。あほの私にはこれが??です。「阿部一族」の内容が資料べた写しという件はかなり昔耳にしたことがあったが、だからと言って明治期の巨匠「漱石と鴎外」の質を貶める資格は雑魚の私には寸分もない。2024/11/25
星乃
2
官僚と文士、鷗外はどちらに比重を置いていたのか。『渋江抽斎』『伊澤蘭軒』などの執筆過程を入念に調査、その足跡に迫る。鷗外の作品を考証学として読むと客観性に欠けていると鋭く指摘。鷗外は現実世界がどうであれ心の居場所は文学にあったにちがいないと勝手に思っていたのだが、官僚としての野心も並々ならぬものがあったようだ。しかし、最期の最期は文士として亡くなったと言うのが清張の見立て。乃木希典の殉死、白樺派のくだりも興味深い。清張がここまで鷗外に執着した理由は何も語られていないので、そこも知りたかった。2022/08/02
zatugei
2
著者の絶筆らしい。「ある『小倉日記』伝」で世に出た著者が森鴎外のノンフィクションを最後に書いていた。鴎外を生涯、気にしていたのだろう。鴎外と同様、読みにくいが名文ではあるのだろう。2019/12/03
Gen Kato
2
再読。最初の結婚の失敗と史伝への読み込みの比重が大きい。これまでの鷗外批評家たちへの「わかっちゃいねえな」な冷笑的態度が露骨に出ていてちょっと驚く。鷗外という人は魅力的かつ大きな謎ですね。2015/11/07
偽読日記
1
松本清張が鴎外について書いている。「渋江抽斎」についても頁を割いていると何かで読み、借りてくる。抽斎作成の経緯が分かればくらいの気持ち。読んでみて驚く。清張は、鴎外を盗作者のように書いている。抽斎の子孫の保さんだったけ、彼が書いた文書の引き写したものだという主張。同じ文脈で書いているのは確か、でも「抽斎」の引き締まった文章の作り。これは鴎外のものでしょ。清張の言い分は、駄菓子と本当に美味い菓子を並べて、成分は同じと笑うようなもの。もともと清張という人、妙に偉そうと思っていたので、怒りが倍増。途中で投げる。2024/12/26