内容説明
十三世紀、ユーラシア大陸を席捲したモンゴル軍が占領したペルシャ高原のとある街。モンゴルの将軍とその命を狙うペルシャ人との暗闘を描いた「ペルシャの幻術師」(昭和三十一年、第八回講談倶楽部賞受賞)は司馬氏の幻のデビュー作で、文庫初登場である。同じく文庫初収録の「兜率天の巡礼」等、全八篇の短篇集。
著者等紹介
司馬遼太郎[シバリョウタロウ]
大正12(1923)年、大阪市に生れる。大坂外国語学校蒙古語科卒業。昭和35年、「梟の城」で第42回直木賞受賞。41年、「竜馬がゆく」「国盗り物語」で菊池寛賞受賞。47年、「世に棲む日日」を中心にした作家活動で吉川英治文学賞受賞。51年、日本芸術院恩賜賞受賞。56年、日本芸術院会員。57年、「ひとびとの跫音」で読売文学賞受賞。58年、「歴史小説の革新」についての功績で朝日賞受賞。59年、「街道をゆく“南蛮のみちI”」で日本文学大賞受賞。62年、「ロシアについて」で読売文学賞受賞。63年、「韃靼疾風録」で大仏次郎賞受賞。平成3年、文化功労賞。平成5年、文化勲章受賞。著書に「司馬遼太郎全集」(文芸春秋)ほか多数がある。平成8(1996)年没
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感想・レビュー
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雪風のねこ@(=´ω`=)
153
一般に言うファンタジー以上に幻術的な表現。なんだけれど人物や世界はしっかりとした現実的な描写で、その落差を充分に楽しめる。陽と陰との境目を探る感覚は、芥川龍之介の地獄変に似た妖しさがある。まぁ境目と気が付いた時にはとっくに越えちゃってるんだけれども。幻術ってのは人の欲を上手く手玉にとって絡め取るのが特性であり、聖人君子の様に振る舞うのでは無く欲望を滾らせ迸らせる様に活き活きと描く様は、却って清々しい思いもする。そうであるからこそ、物語に出てくる女性(にょしょう)の艶めかしさが際立っている様に感じる。2017/08/19
優希
101
面白かったです。デビュー作を含む短編集。時代も場所も全く異なってはいるものの、幻想的な雰囲気を纏っていました。陰と陽の間にあるような作品が多いように感じます。妖しくも美しい。歴史を絡めながら描かれる世界はまさに伝奇小説と言えると思いました。引き込まれない場面はありません。2018/01/13
pdango
67
★★★☆☆昨秋、司馬遼太郎記念館の企画展『梟の城』に行き、忍者づいた弾みに買った1冊。つい、果心居士の幻術にかかってしまったように、マニアック?な本に手を出してしまう記念館の魔力。面白くないわけじゃないけど、波に乗りきれず。2019/06/01
TATA
56
職場文庫から。司馬遼太郎さんのデビュー作を含む初期の作品集。表題作に加え、モンゴルを舞台にした作品や忍者譚と幅広い作品バリエーション。確かに娯楽色の強い作品群ではあるが筆者一流の歴史に対する深い洞察も見受けられ興味深く一読。作品もそうだけど、当時の文壇に関する記載にも詳しい解説を読んで更にふむふむと。好みなのは深い歴史洞察が感じられる「兜率天の巡礼」。2018/11/25
i-miya
43
(図=竹内街道と大道) 大阪湾、堺、仁徳天皇陵、金岡=北に大阪市、岡=北に大和川、古市、応神天皇陵、駒ヶ谷=北に生駒山、信貴山、飛鳥、春日、竹内峠=北に二上山、長尾(ここから?ここまで?)、大和高田、橿原=南に飛鳥、北に奈良、桜井、初瀬川。2011/07/07