内容説明
エトロフ島は好漁場であったが、すさまじい潮流が行く手を妨げ、未開のままだった。しかし幕府は北辺の防備を固めるため、ここに航路を確立する必要を痛感して、この重要で困難な仕事を嘉兵衛に委ねた。彼の成功は、蝦夷人にも幕府にも大きな利益をもたらすであろう。が、すでにロシアがすぐとなりのウルップ島まで来ていた。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さつき
85
幕府の蝦夷地開拓事業に徐々に関わっていく嘉兵衛。商人として利を求めるならば決して深みには嵌ってはならないと自分に言い聞かせつつ、夢中になってしまえばもう引き返せない。クナシリ島とエトロフ島の間の難所に航路を見つけたり、魚肥の製造、紅鱒の加工などを骨身を惜しまず蝦夷びとに伝授する様子は生き生きとしていました。生きる意味をそこに見つけたのでしょう。千島列島の歴史も興味深く、今に続く領土問題の発端がどうだったか考えさせられました。2021/04/06
k5
77
北前船の船頭として本格的な活動を始めた嘉兵衛。まだロシアこそ姿を見せませんが、地元のアイヌとの交流や千島列島の様子なども描かれ、冒険商人譚として面白さが分厚くなって来ました。最上徳内や伊能忠敬などの有名人もキャラ立ちした感じで描かれ、やはり冒険小説の文法で書かれているなあ、と思います。2023/02/23
優希
76
嘉兵衛の世界がどんどん広がっていくように思えました。運が良いのか、困難に見えるエトロフ島の開拓もこなしていくのを見ていると、力のある人物に感じられてなりません。嘉兵衛が成功することで、幕府も利益を得るのですね。未開の蝦夷地に迫るロシア。そんな時代での嘉兵衛は大きな利益だったことでしょう。2019/01/15
やっちゃん
64
ついに北方領土編、冒険小説も歴史も好きなのでますます面白い。この巻は特に脱線がすさまじい、脱線が脱線を呼び何の話だったか分からなくなる。択捉で人望を集める嘉兵衛が良い。こんな仕事楽しくてやめられないだろう。2022/11/20
TATA
61
嘉兵衛は蝦夷地での存在感を増し、北方開拓のためにはなくてはならない存在に。幕府からのお役目を受けるごとに商人よりも船頭としての好奇心が募っていく。時代は丁度ロシアの千島南進が活発になる頃。日本の国境線はこうやって決まって行ったのかと、少なくとも本巻では本論よりもこちらが司馬さんの書きたかったことなんでしょうね。2022/08/06
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