内容説明
海産物の宝庫である蝦夷地からの商品の需要はかぎりなくあった。そこへは千石積の巨船が日本海の荒波を蹴たてて往き来している。海運の花形であるこの北前船には莫大な金がかかり、船頭にすぎぬ嘉兵衛の手の届くものではない。が、彼はようやく一艘の船を得た、永年の夢をとげるには、あまりに小さく、古船でありすぎたが…。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
レアル
77
この巻は大人になった嘉兵衛の成長物語。かつて読んだ際には嘉兵衛の生き方やその人生に興味を持ったが、今回は農業主体の時代から商品経済の時代への転換期が描かれている時代背景や、制約された中での江戸時代の経済や船業というものの方を興味深く読んだ。嘉兵衛が船で向かう地もまるで自分が旅しているようで読んでいて楽しい。さて極貧だった嘉兵衛が船を持てるようになった。だんだん面白くなっていく。2016/05/29
k5
74
第一巻が青春篇だったとすれば、こちらは飛翔篇。司馬遼太郎の中でももっともオーソドックスなビルディングスロマンなのではないだろうか、と思いました。雇われ船頭の嘉兵衛は、北前船を持つべく鰹節の製造を志したり、危険な筏で江戸前に木材を廻送するといったような、冒険商人的なふるまいをします。目的に向かって純粋に努力する様が実に読みやすく、快適な読書です。さて、ここからもう一捻りほしいな。2023/01/07
優希
72
いよいよ長年の夢を叶えるための第一歩が踏み込まれたように思います。経験をつんだことで、ようやく古船とはいえ、自船を手に入れたことで、仕事と人生と向かい合う人物となっていくように感じました。2019/01/14
TATA
62
嘉兵衛が船を手に入れ更にもう一段の高みへと進んでいく第二巻。嘉兵衛の立身出世ぶりが何かと興味深い。筏で江戸へ、更に出羽へとまさに東奔西走。その過程で諸国の物産、諸事情を知り、自らの夢を語り理解者を得る。そしてその理解者からの援助で更なる高みへ。なんかサラリーマン道にも思えるその過程にはやたらと感心。いつの世でも人の信用というのは得難くかけがえのないものだなと。2022/07/11
やっちゃん
59
打って変わって全国の港巡りの旅小説になった。まるで桃鉄みたいだ、江戸時代ならではのエピソードがおもしろすぎる。相変わらず余談が多いがこれも面白いからもう最高。2022/11/18