出版社内容情報
昭和前期、日本を滅亡の淵にまで追い込んだ軍部の暴走の影には、「統帥権」という魔物がいた。歴史から日本の本質を探る畢生の評論
内容説明
最後まで、この国の行く末を案じ続けた著者が、無数の歴史的事実から、日本人の本質を抽出し、未来への真の指針を探る思索のエッセンス。
目次
馬
室町の世
徳
士
わだつみ
庭
松
招魂
別国
統帥権
うるし
白石の父
近代以前の自伝
李朝と明治維新
長崎
船と想像力
御坊主
日本人の二十世紀
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
むーちゃん
121
実家帰省の飛行機の中で読了。「統帥権」- 無法時代というべきそのころの本質の唯一なものにあると気がついたのは『この国のかたち』を書いたおかげである。 司馬さんの思想の根本にあるものにたいして情熱を傾け書いてあります。 同時に「街道をゆく」も読んでましたが小説も良いですが、エッセー、紀行分もまた格別です。 2019/10/26
カピバラKS
85
●平成4・5年の文藝春秋巻頭随筆。●著者は、政治家も軍人も互いに手の内(弱み)を明かしていたのが明治の日露戦争で、軍人が手の内を明かさなかったのが昭和の大戦とする。●こうした明治と昭和の違いはなぜ生じたか。本書を読み解くと、それは文民と軍部を調整する機能の有無であったことが分かる。明治には両者の調整を元老が担ったが、昭和にはこれを担う者・会議体がなかった。このため、軍部が統帥権を振りかざして暴走することを止められずに、この国は滅んだ。●組織における意見交換と意見調整の重要性を再認識する。2024/09/18
Die-Go
77
再読。日本と言う国の「かたち」を、司馬遼太郎の筆によって読み解く。1巻で述べられていた「統帥権」について改めて記されていたのが印象的だった。今の日本の状況を鑑みて戦慄を覚えざるを得ない。★★★★★2016/03/31
k5
67
本題ともいうべき統帥権について語られる四巻。これまでの話題の幅の広さと闊達さが見えなくなって悲しくはありますが、司馬さんの捉える明治や大正というものの粒度が細かく見えるようでもあって、なるほどこのシリーズを読み終えてから『翔ぶが如く』とか『坂の上の雲』を読み直したいと思えてきました。2024/04/22
カザリ
67
統帥権の解釈が明治を超えて、昭和になり歪んでしまったせいで、戦争に突き進むことになってしまった、という解釈。坂の上の雲と、並行して読んでいると明治までの日本までと昭和になってからの日本がいかに別の国になってしまったのか、という司馬の批判がリアルに伝わってくる。現実を見ない、ということが個人レベルではなく国レベル、というか国の一部の軍のレベルで行われてしまうことがいかに悲劇をもたらすか。。だんだん、幕末、明治、昭和とつながってきた。。自分のいるところまであと少し。2014/08/31