内容説明
ソ連の老作家が書いた痛烈な体制批判の小説。その入手を命じられた元新聞記者・鷹野は、本人に会い原稿を運び出すことに成功する。出版された作品は、全世界でベストセラーとなり、ソ連は窮地に立った。ところが、その裏には驚くべき陰謀が…。直木賞受賞の表題作など全5篇を収めた、初期の代表的傑作集。
著者等紹介
五木寛之[イツキヒロユキ]
1932年福岡県生まれ。作家。戦後北朝鮮より引き揚げたのち、早稲田大学文学部露文科に学び、その後、作詞家、放送作家等を経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で第6回小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で第56回直木賞、76年『青春の門 筑豊篇』ほかで第10回吉川英治文学賞受賞。81年より一時休筆して京都・龍谷大学に学んだが、のち文壇に復帰。小説のほか、音楽・美術・歴史・仏教など多岐にわたる文明批評的活動が注目されている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
345
初めて読んだのは、高校1年生の時だった。私はこの小説の向こうに五木を通してロシアを望見していたのだった。そして、早稲田の露文に痛切な憧れを抱いていたのである。ここに引用されていた「われ蒼ざめた馬を見たり。その馬にまたがれる者の名を死と言う。冥府その後にしたがえり」というロープシンの言葉に、文学の持つ力を感じ、全身に震えのような感覚を覚えていたのだった。ここからは、レールモントフやドストエフスキーまではほんの1歩だったのである。実に久しぶりに再読したが、あの感覚が全的に蘇ることはなかった。そこにはこれまで⇒2024/09/15
kaizen@名古屋de朝活読書会
173
【直木賞】2014年オリンピックのあったソチ。ソチで日本人翻訳家とロシア人作家が出会う。日本人翻訳家が亡くなった後、新聞記者が出版の密命を受けてロシアに飛ぶ。ユダヤ系ロシア人の物語。事件の裏にもっと暗い、黒い話がうごめく。<おれはいったい何者だろう?><焼き日ですよう>。芥川賞でもよかったかもしれない。2014/03/02
ehirano1
113
「バルカンの星の下に」は何とも切なかったのですが、宗谷季子が矢島に何か言おうとして言わなかった幾つかのシーンが気になってます。何を言おうとしていたのかなぁ・・・、それこそ同性である女性にしかわからないことなのかも、と思うのですが、これを書いたのは男性なんですよね。つーことは・・・・・。2021/02/24
優希
106
第56回直木賞を含む短編集です。60年代という時代を感じますが、面白かったです。高度成長期の日本とソ連、東西冷戦の背景を色濃く反映しているのが新鮮でした。謎めいた顔を追い続けることで見えてくる裏に隠された真実。異国の雰囲気と短編が丁度良い絡み具合だと思います。読み応えのある作品でした。ロシア文学にもより興味が湧きます。2016/10/09
遥かなる想い
103
読んでいるうちに、奇妙な懐かしさを覚えていた。冷戦の時代、ソ連に対して抱いていた不気味な感情。スパイ小説などもすべて冷戦を前提にしていた。本作で取り上げられたソ連の未発表作品に関わる話も、抑圧された作家群の時代背景・政治背景を知って初めて深みを帯びてくるのだが・・ 2010/08/22