出版社内容情報
本来なら学校に行っているはずのわが子が毎日家にいる。その姿を見る親や家族は、これほどつらく悲しく、無念なことはないと言う。学校も、そこにいるはずの子どもがいない、寂しく残念なことだと嘆く。子どもの数は減りながら、不登校は全国あまねく、男女の別なく、親の職業にも関係なく、発生比率を高めて増え続けている。現在、地域で差はあるが、小学生は25人に1人、中学生は10人に1人が不登校のようだ。
また、教室でなく別室に登校する子どもたち、フリースクール等に通う子どもたちを加えれば、その数はさらに増す。高校生は休学や退学、進路変更のことがあるので正確な数の把握は困難であるが、不登校の子どもたちの多くが進む通信制単位制高校の卒業率が、ごく少数の高校を除いて、3割程度と言われているので、学校不参加の子どもたちは膨大な数にのぼる。加えて社会的引き籠もりの人たちの数を入れると、この問題はこの上なく深刻である。
学校は、子どもが人に成るために必修の学びと生活の場であり、就学し、願う学歴を取得するところである。わが国の学校教育は一律の就学を制度としている。そのおかげで私たち日本人は、等しく教育を受ける機会を得て、生きるために必要な知識や技能を習得する。また、人と時間を共有して、より好ましい人間性を身につけ、その人らしい意味ある人生を全うする契機を得る。学校は価値ある人生を創造する貴重な学びの場である。
不登校問題は一日も早い解決が必要である。再登校や再就学が実現したときの子どもたちの安堵とうれしい表情は、実に爽やかで美しい。周囲の喜びも一入である。幸せが訪れる。私たち日本人は、この問題の発生を抑止し、子どもたちの再登校と再就学を具現するために、この問題を他人事にすることなく、愛と知恵、感性、行動力を結集して問題解決を図り、幸福感をともにする必要がある。
かなり長い年月、いくつかの心理職の資格を得て、市井の片隅で、新生児から大学生までの子どもたち、親や家族、そして教師などの教育相談(カウンセリング)に携わってきた。子どもたちが抱えるあらゆる問題に関わってきたが、昨今、特に多いのは不登校問題の相談依頼である。
不登校問題に関する教育相談のねらいは再登校と再就学の実現である。それは、この問題の本質と個々の事例の問題の所在を正しく理解し、手だてを工夫し、手順に従い、知恵と感性をはたらかせれば、再登校と再就学はほぼ実現する。この書では、心理療法を学び、また数多くの臨床事例から習得した不登校問題の解決のための考え方や具体的な方策を明らかにする。
また、これまでの教育相談で、子どもたち、親や家族、教師等からたくさんのことを学んだ。それらを基に、不登校を生まない子育てや学校教育のあり方、社会一般の人たちへの関与の願いなどの提言を行う。行政当局への要望等も付した。