出版社内容情報
投資家要注目! 言説分析から見えてくる植田総裁の「次の一手」
2023年に植田和男総裁が就任して以来、マーケットは不安定な状況が続いている。
2024年夏までは円安基調に歯止めがかからず、植田総裁が発言するたびに円は売り込まれた。
しかし、2024年7月末に利上げを発表し、会見でさらなる利上げに言及した途端、株式市場は史上最大の暴落に見舞われてしまった。
その後も市場は不安定に推移し、植田総裁の一挙手一投足から目が離せない状況が続いている。
いったい日銀は何を考えているのか? 植田総裁は何がしたいのか?
通信社で通算20年以上も日銀担当をつとめてきたベテラン記者の著者は、「レトリック分析」を用いて、日銀総裁の発言の中から隠されたメッセージを読み解いてきた。
レトリック(修辞学)は、日本では「巧妙に人を騙す詭弁」と捉えられがちだが、欧米では古代ギリシャから連綿と続く学問領域として受け入れられている。どのように他者を説得し、自分の主張の正当性をアピールできるかは、死活的に重要な能力であるとみなされてきた。
日銀は、さまざまなレトリックを駆使して市場にメッセージを送っている。「景気拡大の芽」「デフレという慢性疾患」「成長力は経済の基礎体力」等々、さまざまなメタファーを駆使することもある。また、揚げ足をとられないよう、巧みに日銀の責任を回避するレトリックもある。一時期、官僚の作文を「霞が関文学」と揶揄する向きがあったが、「日銀文学」なるものもある。
日銀文学は総裁の個性によって大幅に異なるが、言葉の統計をとってレトリック分析にかけることによって、総裁のホンネや弱点が見えてくるのだ。
著者のレトリック分析によると、前任の黒田総裁は明解で歯切れのよい言葉を使うことで、市場に強いメッセージを送っていた。しかし、任期途中から急速に歯切れのよさが低下し、責任を他者に転換するような物言いが多くなった。
続く植田総裁は、黒田時代の大規模緩和から「通常モード」へとナラティブの大転換をおこなった。同時に、丁寧に説明を尽くす姿勢に徹している。
ところが、丁寧な物言いを心がけようとすればするほど、予想外の言葉が口をついて出てしまい、市場にあやまったメッセージを発してしまいがちだ。それが投機筋につけ込まれる。
では、そうしたレトリックはいったい誰が書いているのか?
じつは、日銀エリートたちの「奥の院」である「企画局」の少数のメンバーが、各総裁の好みにあわせて起草しているのだ。
著者は豊富な取材経験から、日銀エリートたちの生態や各総裁の秘話も明かす。
日銀を理解するには絶好の一冊だ。
内容説明
「金利のある世界」が17年ぶりに復活し、利上げに踏み切った日本銀行。その途端、市場はパニックに陥った。なぜ日銀は市場との対話が下手なのか?難解な言い回しの「日銀文学」に、どんなメッセージが隠されているのか?―レトリック分析で金融政策を読み解く!
目次
第1章 レトリック分析で見えてくる世界
第2章 日銀文学は面白い
第3章 モダリティにあらわれる日銀総裁の強気と弱気
第4章 メタファーでわかる日銀総裁のキャラクター
第5章 植田総裁のレトリックを読み解く
第6章 マス・メディアの役割と取材現場からの提言
著者等紹介
木原麗花[キハラレイカ]
ロイター通信社記者(日銀担当)。1973年生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業、早稲田大学大学院政治学研究科修了。時事通信社、米ダウ・ジョーンズ経済通信記者をへて、2006年以降現職。通算20年以上にわたり日本銀行の金融政策の取材に携わり、数々の調査報道に従事。2014年、白川総裁・黒田総裁時代の金融政策を追った報道でSociety of Publishers in Asia(SOPA)共同受賞。2012年と2022年には優れた功績を残した記者に与えられるReuters Journalists of the Year受賞。日本金融学会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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