出版社内容情報
SNSの炎上、コロナ、オリンピック……現代日本を動かしていたのは、やはり「空気」だった。SNS時代を鋭く活写した初の評論集。
内容説明
SNSの炎上、五輪「開催」か「中止」か、同調圧力、自粛警察…「極論」だらけの社会になったのはなぜか。ネット時代の日本を鋭く活写した気鋭の筆者による初の評論集。
目次
第1章 ふたつの同調圧力に抗って―五輪とコロナ自粛(暴走する東京五輪;コロナ自粛という空気 ほか)
第2章 虚構の戦前回帰―歴史の教訓をアップデートする(愛国教育と忖度のゆくえ;愛国とエンタメの再結合 ほか)
第3章 プロパガンダの最前線へ―音楽から観光まで(軍歌はナショナリズムをどう表現してきたか;エンタメ国防論 ほか)
第4章 総合知を復興せよ―健全な中間をめざして(それでもわれわれが「右でも左でもない」をめざすべき理由;ひとは正義と一体化できない ほか)
著者等紹介
辻田真佐憲[ツジタマサノリ]
1984年、大阪府生まれ。評論家・近現代史研究者。慶應義塾大学文学部卒業、同大学院文学研究科中退。政治と文化芸術の関係を主なテーマに、著述、調査、評論、レビュー、インタビューなどを幅広く手がけている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こーた
243
評論家をはじめとする総合知を莫迦にしてはならない、と著者は説く。誰もが専門家にも、また素人にもなりうる時代だ。SNSで、ジャーナリストや作家の半端な知識を貶めてきた結果は、どうなったか。雑誌は無くなり、本は読まれず、テレビのコメンテーターはトンデモとお笑い芸人ばかりになった。彼ら(とそれを重用する政治家たち)の怪しげな言説は批判されず、いま矢面に立たされるのは真の専門家たちだ。アカデミズムは攻撃に晒され(学術会議問題やコロナ分科会を見よ)、知はいまや風前の灯火である。中間を破壊してはならない。⇒2021/08/06
どんぐり
67
ネット時代のSNS記事を収載した著者初の評論集。どれもSNS社会とプロパガンダ、同調圧力に抗する議論に終始。時事ネタ記事が続くので、さすがに途中から飽きる。まるで橘玲の新書本を読んでいるみたいで、新鮮味がない。初出は2014年から2021年にかけての「文春オンライン」「文藝春秋digital」「現代ビジネス」「ジセダイ」。2024/10/01
nnpusnsn1945
54
著者の是々非々とする姿勢は大いに頷ける。トーンポリシング批判についての指摘は大当たりと言えよう。中立論批判は、無茶な論理を通す為の詭弁ではないかと考えていた私には納得できる。肯定できる主張はリベラル側だが、蛸壺化が酷く心底辟易させられる場面が多いゆえ、距離をとるようにしている。64年のオリンピックが日本国民にそこまでウケていなかったのは面白い。2021/07/03
よっち
42
SNSの炎上、コロナ、オリンピック…現代日本を動かしていたのは「空気」だった。同調圧力やSNS社会に抗うべきと考える著者が、ウェブ媒体に掲載された時評をまとめた評論集。実は酷評されていた前回の東京オリンピック、コロナ自粛という空気について、コロナ下での図書館利用制限の影響、歴史の教訓や令和の皇室、アートについて、軍歌大国北朝鮮訪問や中国レッドツーリズム体験紀行など、どうしても極端な方向に向かいがちなネット上での言論に振り回されないよう、冷静に中道を目指すべきという主張には見るべきものがあったと思いました。2021/07/20
ころこ
40
著者の評論集であると共に、同じ日に発売された新書・與那覇潤『歴史なき時代に』とほぼ同じテーマを扱っています。それはSNSによる極端になった言説批判です。同じ社会で起こったことなので共通しているのは当たり前ですが、両者とも呉座問題を取り上げているところが特徴的です。與那覇本では最初に取り上げられていて、右派に対抗する副作用としての歴史意識の失調だと分析されていました。他方で、本書では最後に取り上げられていて、「正しい意見でも勝ち過ぎない」ことを警鐘しています。著者はよく中間の議論が大事だと主張します。これは2021/06/20