出版社内容情報
硫黄島と並ぶ激戦の地ペリリュー島。中川州男大佐の指揮下、米軍を散々苦しめて玉砕した日本軍の戦いを現地取材や経験者の声で再現。
内容説明
太平洋戦争、有数の激戦地でありながら、広く知られることのなかった南洋の小島ペリリュー。守備隊を率いた指揮官・中川州男の生涯を軸に、戦闘へ参加した元兵士の貴重な証言などから、74日間にもおよぶ徹底抗戦の全貌に迫る。
目次
序章 両陛下のご訪問
第1章 頑固だが純粋な「肥後もっこす」
第2章 閑職からの復帰
第3章 満洲から南洋へ
第4章 住民へ退避を指示
第5章 アメリカ軍上陸
第6章 玉砕
第7章 それぞれの八月十五日
最終章 「戦争に勝者も敗者もない」
著者等紹介
早坂隆[ハヤサカタカシ]
1973年、愛知県生まれ。ノンフィクション作家。日本文藝家協会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
107
ペリリュー、聞き慣れない土地の言葉だがガダルカナル、サイパン、硫黄島、沖縄、インパールといろいろ読んでみるとそこにたどり着くことは当時の政府や司令官の決断ミス、判断ミスということだ。中川州男という人は温厚で真面目で部下思いだったということも知る。どの決戦が繰り広げられた土地でも上官の判断が重要だったということ。2022/04/06
skunk_c
42
パラオのペリリュー島は太平洋屈指の激戦地として知られ、洞窟戦という硫黄島、沖縄の先駆となった。その守備隊の連隊長中川州男大佐に焦点を当ててこの戦闘を回顧する。全体に帝国日本に甘めの筆致ながら、戦争の空しさや、兵士や将校の戦場における実態は十二分に伝わってくる。また、中川個人に対しての丹念な取材により、戦争に生き、そして戦死したひとりの現場指揮官の姿が浮かび上がる。大本営や参謀本部で兵を動かすのとは異なる、生身の戦争指導が垣間見られる。中公新書『硫黄島』と併読すると、より立体的な像が結ばれると思う。2020/02/18
trazom
36
恥ずかしながら、私は、ペリリュー島(パラオ)がどこにあるかも知らなかった。ましてや中川州男大佐という守備隊長の立派な人格も。フィリピン奪還の拠点として上陸作戦を敢行する米軍に対し、守備隊の使命は時間稼ぎのための持久戦。米国海兵隊に史上最悪の損害を与える奮戦だったが、2か月後に玉砕する。そして現代。「パラオは忘れられてしまったんだなあ」「パラオは約三十年も日本だったのですよ」と言うパラオの人たちに、返す言葉が見つからない。パラオの元大統領が戦争に対して語った言葉も胸を打つ。「忘れてはいけない。そして許す。」2019/08/24
99trough99
24
太平洋戦争は、本当に知らないことがまだまだ多い。敗戦一年前の昭和19年9月15日に、パラオ諸島ペリリュー島への米軍上陸を食い止めようとする中川州男率いる陸軍第14師団歩兵第2連隊の死闘を描く。栗林忠道中将の硫黄島での戦いもそうだが、緻密に自分に課せられた使命を全うしようという軍人がいたものだと痛感。パラオの人たちからは感謝されていたという下りは、人として譲ってはならない重要な部分を矜持すべしと教えられる。ナカムラ元パラオ大統領の「忘れてはいけない。そして許す」の言葉は重い。2023/03/04
takam
9
日本が太平洋の島々で米軍を苦しめ始めた戦いはペリリューから始まる。日本陸軍の官僚組織の王道コースに乗らずに傍流の人物が指揮している。万歳突撃であっけなく玉砕するのではなく、苦しい守る戦いをすることによって米軍を苦しめた。米軍側も硫黄島、沖縄と続く地獄に入った訳だが、中川中佐も栗林中将、八原大佐もみな傍流の合理性を重んじる人物であることが興味深い。堀栄作氏による分析もこの戦いから活かされることになる。しかしながら、当時の劣勢な状況下でも指導者を信じて、国を守るために戦った兵隊の方々には敬服する。2019/12/11