出版社内容情報
一帯一路に邁進する習近平。しかし内陸アジアこそ中国最大の「強敵」だ。歴史の改変、暴力、洗脳――偽造された「民族神話」を剥ぐ!
内容説明
「中華民族の偉大なる復興」を唱える習近平。しかし、その世界戦略「一帯一路」のターゲット、内陸アジアこそ中国最大のアキレス腱だ。歴史の改変、暴力による弾圧、洗脳教育、結婚外交―「中国は巨大な一つの国家であり、その支配は正当だ」という神話づくりの数々を鋭く暴く。
目次
第1章 「中華民族は兄弟」という神話
第2章 教育による神話創成
第3章 「チンギス・ハーンは中国の英雄」!?
第4章 万里の長城「中外一家」の神話
第5章 「文化大革命」という神話
第6章 ウイグル人「テロ」の背景
著者等紹介
楊海英[ヨウカイエイ]
1964年南モンゴル・オルドス高原生まれ。静岡大学教授。北京第二外国語学院大学日本語学科卒業。著書に『墓標なき草原―内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録』(岩波書店・司馬遼太郎賞受賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Kentaro
35
自治区共産党委員会の肝煎りで、「新疆は古くから我が国の固有の領土にして核心的な利益」で、ウイグル人などの内陸アジアの諸民族も「我が国の多民族の大家庭の一員」だという政治的な理念を少年たちの頭に叩きこむためである。言い換えれば、中国共産党の洗脳用のイデオロギー的な道具だ、と宣言しているのである。このような絵本を読んで育つ少年たちは、中国の「愛国主義者」になっていくことが期待されている。ウイグル人たちは「新疆」の名称よりも、「東トルキスタン」を好む。「トルキスタン」とは、トルコ(テュルク)人の領土を意味する。2022/07/23
軍縮地球市民shinshin
12
中国がいかに少数民族を現在も弾圧し続け居ているかがよく分かった。沖縄では、「琉球独立」の研究会があるそうだが、中国でそんなことをしたら逮捕されて命も危ういという。そんな自由はないのである。琉球独立派は、その点は決して言わない。彼らの思想的故郷がどこにあるかよくわかる。2018/06/19
Sapporo Shiojiri
4
著者の楊海英氏は、内モンゴル出身の気鋭の歴史人類学者。司馬遼太郎賞を取るなど、読ませる研究書を書かれる。そこが少し注意が必要なのだけど。内陸アジア(史)の立場から、中国の少数民族政策・歴史認識を厳しく批判。国民政府・蒙疆政権・満洲国・中国共産党のチンギスハーン陵を巡る抗争の歴史など、面白いトピックが多い…が、楊先生の政治的立場を知らないで読むと危険な気が。オルドス地域のモンゴル人が、チンギス崇拝において、祭祀者として重要な役割を持っていたというのは初めて知った。こういう人類学的考察が、きらりと光りますね。2020/06/21
じろう
2
楊海英さんの本はモンゴルから見た中国という新鮮でユニークな視点が好きなんだがモンゴルナショナリズムが強すぎて多少差っ引いて理解している。やっぱジンギスハーンて野蛮でしょうとかモンゴルや新疆での中国とソ連との歴史的せめぎあいなんかも決して中露が単純に友好国とは言えない面もうかがえる。チェチェンで戦ったのがモンゴル系ブリヤート共和国の兵士であったとか現在のロシアウクライナ戦争を想起させる。2022/09/26
乱読家 護る会支持!
2
いかに中国という国が、長くイメージ戦略をし続けているかがわかる。中国神話に実際に屈していたのは朝鮮と琉球だけであり、日本も内陸アジアも自国の独立性と誇りを保ってきた。 我々、日本人も【中国】神話から脱しましょう。卑弥呼よりも大和朝廷ですぜ。。。 「我が国は有史以来ずっと強く、領土が広大で、統一した国家だった」とが「【中国】という神話」。一帯一路構造は、この神話を前提としたもの。しかし、内陸アジア(モンゴル高原から黒海沿岸までの草原地帯)から中国を見ると、強国としての中国は存在しなかった事が見えてくる。2018/04/19