文春新書<br> 予言者 梅棹忠夫

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文春新書
予言者 梅棹忠夫

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  • サイズ 新書判/ページ数 287p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784166611065
  • NDC分類 289.1
  • Cコード C0295

出版社内容情報

高度成長、ソ連崩壊、情報産業発展、妻無用論…生態学に基づく斬新な予言をことごとく的中させた「知的プレイボーイ」の実像に迫る。高度成長、ソ連崩壊、情報化社会、専業主婦の減少……数々の予言を的中させた戦後最大の知性が遺した「最後の予言」とは?



2010年に没した梅棹忠夫(国立民族学博物館名誉教授)は、往年のベストセラー『知的生産の技術』(岩波新書)の著者として有名である。

だが、梅棹の業績の真骨頂は、戦後日本社会の変化を予言し、しかもその予言がことごとく的中したことにある。京大理学部の秀才で専攻は生物学だった梅棹は、少壮の論客として颯爽と登場し、生態史観にもとづく独自の文明論をもってユーラシア大陸の勢力図を大胆に描きなおしてみせた。

敗戦直後の時代から、すでに日本の高度経済成長を予言。マルクス主義者や「進歩的文化人」から大批判を浴びるが、その予言どおり、日本は高度経済成長を謳歌した。また日本の家族制度の変化を検証し、「妻無用論」を発表。共働きの増加と専業主婦の激減を予測し、これも的中。オイルショックの20年以上も前から中東が国際政治の震源地になると予言。1960年代からソ連の崩壊、大阪の没落なども予測していた。そしてパソコンもない時代に「情報産業論」を発表し、今日の情報化社会を予言していた。

一方で、都市開発や文化行政のオーガナイザーとしても卓越した腕力を持ち、大阪万博や国立民族学博物館の立ち上げでは、官僚や政治権力者を巧みに操った。

「知的プレイボーイ」を自認し、理系文系の垣根を軽々と越えた。フィールドワークを得意とし、若手研究者らと喧々諤々の議論をすることを好んだ。実体験に基づくオリジナリティ溢れる意見を尊重し、権威を笠に着る学者を心底軽蔑した。

そんな梅棹は晩年、「日本文明は終焉に近づいた」という不気味な予言を遺していた。

梅棹はどのようにして自らの文明論を作り上げたのか? そして最後の予言の真意とは?

生前の梅棹を知る著者が、「知的プレイボーイ」の実像をあますところなく描く。

東谷 暁[ヒガシタニ サトシ]

内容説明

高度成長、ソ連崩壊、情報化社会、専業主婦の減少…数々の予言を的中させた戦後最大の知性が遺した最後の予言。

目次

プロローグ 実現した予言と失われた時代
第1章 「文明の生態史観」の衝撃
第2章 モンゴルの生態学者
第3章 奇説を語る少壮学者
第4章 豊かな日本という未来
第5章 情報社会論の先駆者
第6章 イスラーム圏の動乱を予告する
第7章 万博と民博のオーガナイザー
第8章 文化行政の主導者へ
第9章 ポスト「戦後」への視線
第10章 行為と妄想
エピローグ 梅棹忠夫を「裏切る」ために

著者等紹介

東谷暁[ヒガシタニサトシ]
ジャーナリスト。1953年山形県生まれ。早稲田大学政経学部卒業。大学在学中から国立民族学博嗣着化芋『季刊民族学』編集部で編集に従事。同博物館設立の中心人物で初代館長だった梅棹忠夫の知遇を得る。その後、『ザ・ビッグマン』編集長、『発言者』編集長などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

壱萬弐仟縁

33
トインビーの史観とは、世界には文明(社会)が誕生したが、それらは独自課題を克服しつつも、互いに衝突、影響を与え合った。この過程を挑戦と応答として論じた(22頁)。梅棹先生は京都西陣にお生まれになっている(37頁)。梅棹先生の豪放磊落ぶりは、院生で教授に立候補していた(71頁)。しかし、梅棹助教授は生物の講義で、セクハラ、アカハラをしていたとも読める(82頁~)。これでは現代の准教授はクビにされかねないだろう。梅棹先生は、経済学において、情報はこれまでまともに扱われてこなかったという(116頁)。2017/07/12

nizimasu

9
梅棹忠夫先生は個人的には「素人でも紙とペンがあれば偉大なものがかける」という私見には驚かされた。別に研究家でもないけれどその素人ならではというのが自分の仕事の中でも励みになったのも事実でスゴく個人的には共感できる存在。その足跡を辿りながら「文明の生態史観」だけでない本人の思想的な背景を探っていくのが本書の狙い。例えば情報化社会を予見していたと言えばそれもそうだけど、後半にでてくる文化事業に対する飽くなき変革に対する情熱みたいなものが興味深かったかもしれない2017/02/13

ドクターK(仮)

5
梅棹忠夫という名前や、彼の主著である「文明の生態史観」くらいは知っていたが、元々の専門である生態学のみならず、情報社会論からイスラム世界までありとあらゆる分野に言及し、国の文化行政にも積極的にコミットした人物だとは知らなかった。その知的好奇心と大胆な行動力には敬服するばかりである。しかも、どんな分野であっても、専門家に勝るとも劣らない説得力で議論を展開し、次々と予言を的中させてしまう洞察力もすさまじい。それでいて、「学問はたのしみごと」(p.259)と言ってのける肩肘の張らない人柄も魅力的である。2017/01/31

かりん

5
4:《距離を取った新たな梅棹評伝。》梅棹忠夫月間とテーマを定めた12月。ご本人の著書は再読ばかりで、新刊本は年末滑り込み。「預言者」というのはどうも納得が行かないけど、知らなかった話や忘れていた話がありました。個人的関わりがあり理解しつつも、その近すぎなかった距離を保って、梅棹万歳だけにしないようにしようという著者の意志を感じます。そういう評伝も良いと思う。印象に残ったのは、エントロピーと情報の話。有澤広巳。ナッシングor…? それにしても、文明の生態史観は36歳のときかぁ…。2016/12/31

S_Tomo🇺🇦🇯🇵

4
今年最初の一冊。半世紀ほど前に書かれ今尚読み続けられている「知的生産の技術」の著者で、異色の社会人類学者の梅棹忠夫氏について、直系の弟子ではないが少し離れた位置にいる部下だった筆者による「行為人」として梅棹氏について書かれた一冊。氏の驚異的な先見性の高さや、大阪万博から国立民族博物館の設立などの文化行政への精力的な関わりを見るに、これからという時に懇意にしていた政治家の死や梅棹氏自身の失明など、もういくばくかの幸運があれば今の日本の文化的な取り組みは変わっていたのではないか、と思うと実に残念なものがある。2017/01/06

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