内容説明
陸軍と官僚を支配下において山県閥をつくり、デモクラシーに反対し、みんなに憎まれて世を去った元老・山県有朋は、日本の近代史にとって本当に害悪だったのか?不人気なのに権力を保ち続けた、その秘訣とは?首相、元帥、元老にして「一介の武弁」。
目次
吉田松陰の「忠実」な弟子―はじめに
松陰門下の青春―尊王攘夷と奇兵隊
西郷隆盛への憧れ―討幕への戦い
「狂介」から「有朋」へ―欧米巡遊・廃藩置県
山県参議兼陸軍卿の誕生―征韓論政変・台湾出兵
にがい勝利―西南戦争
陸軍の充実―朝鮮をめぐる日清対立
陸軍の長老から政治家へ―日本陸軍の大枠形成
最初の組閣―帝国議会開設・伊藤博文との対立
やせがまんの限界―日清戦争
元老としての組閣―日露協商と山県系官僚閥の形成
参謀総長として陛下に仕える―日露戦争
きどわい勝利の後の現実―桂太郎と原敬の挑戦
元老筆頭の権力―第一次世界大戦と大正デモクラシー
晩年の落とし穴―宮中某重大事件
山県有朋と日本―おわりに
著者等紹介
伊藤之雄[イトウユキオ]
1952年福井県生まれ。京都大学教授。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。京都大学博士(文学)。確かな史料にもとづいて、明治維新から現代までの政治家の伝記を執筆するのをライフワークとする(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Tomoichi
32
人気のない山県有朋。その『愚直』な権力者を一次資料を元にその実像にせまる。途中途中で過去の研究書や論文への批判を入れているのも良い。半藤某も山県有朋の本を出しているが批判すらされていない。研究者でもない人の著作に興味はないかな(笑)研究が進むって良いですね。私は結構「愚直」な山県有朋が好きです。2019/06/26
ばんだねいっぺい
30
愚直な生涯とは、言い得てその通りであるが、そのため、これは、多くの人の処世訓となり得る評伝だ。早くに家族を喪い、師匠を喪い、西郷隆盛を庇いそして喪い、後輩である伊藤博文には出遅れ、歯痛やリウマチに苦しみ、 毀誉褒貶あるが、長く時間をかけてというものには、見習うべき姿勢をいっぱい見出だすことができた。あの頃の明治政府を直に見てみたいなぁ。2022/04/11
terve
23
大隈や伊藤と比較して不人気のイメージが強い山県有朋ですが、そんな不人気の人間が権力を持ち続けられるわけがありません。実際はまじめで思慮深く、だからこそ時流に乗れず一歩遅れている面が強調されるように思います。山県の書面など一次資料を用いているので、素の山県を見られるのですが、実際は筆者の推論が多く、鵜呑みにできない内容であるかと思います。とはいえ、今までになかった山県有朋像を描くことには成功しているように思います。小説と研究書の中間にあるような位置づけでしょうか。2019/09/16
かんがく
20
政党嫌いの権力者で悪者に描かれることの多い山県の人間的な部分がたくさん見えた。家族も友人も少ない孤独で愚直な人物。西郷への憧れ、黒田への反発、伊藤への劣等感、後継者の桂・寺内への失望、原への期待など、山県目線の人間関係が面白い。病弱だったというのが意外だった。先日同作者の伝記を読んだ大隈とは、あらゆるところで対象的である。2019/09/04
mitei
20
もう少し分厚くなければ読みやすかったが、山県有朋の人生を余すことなく書かれていたのでよかった。2011/03/10