内容説明
幕府が瓦解―。家族のためなら何でもやるぞ。畑仕事、内職、就活、のちに脱サラ。重なる失業にも屈せず、一字の虚偽もない自分史を書き残した将軍の影武者。あっぱれな生涯。
目次
第1章 将軍の影武者(御徒の質素な暮らし;政恒、側近に召し抱え;影武者の職務)
第2章 最後の御徒(刀から鉄砲へ;御徒組、消滅す;大阪城に脱出)
第3章 静岡藩士・山本政恒の誕生(江戸城開城;静岡への移住;浜松での試練)
第4章 政府官吏への道(廃藩置県の大波;江戸への郷愁;多趣味な毎日)
第5章 幕臣の意地を貫く(新たなチャレンジ;自分史を書こう;政垣一代記の執筆)
著者等紹介
安藤優一郎[アンドウユウイチロウ]
1965年、千葉県生まれ。歴史家。文学博士(早稲田大学)。江戸をテーマとする執筆・講演活動を展開。東京理科大学生涯学習センター、JR東日本・大人の休日倶楽部「趣味の会」の講師を勤める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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maito/まいと
19
『武士の家計簿』みたいな作品に眼がない私にとってはたまらない1冊。将軍の陰武者をやり、幕末を生き抜き、徳川家静岡移転に伴い収入激減状態へ。職を転々として、リストラされ、“武士の商売”をやって、最期は自分史に命を注ぎ込む。困難で苦しい時期をあがきながら生き残った主人公・山本政恒の生き様は、困ったとき人間が選ぶために大事にすべきものを教えてくれる。きっと彼みたいな武士はたくさんいただろう。必死で新時代を生き抜いたその姿は幕末の英雄と遜色ない光を放っていたように思う。地味だけど示唆に富んだ新書、読んで良かった。2020/02/06
ようはん
16
本書の主人公である山本政恒は下級武士ながら幕府直属で将軍の護衛役を勤めたエリートではあるが、明治維新後は役人を勤める期間が多いものの内職や商売を行う時期があったりと旧士族の苦難が伺える。2025/02/04
tsubomi
5
2021.07.17-08.18:御徒組の武士である山本政恒(まさひろ)の自伝を紹介した一冊で、著者(訳者ではなく原著の著者)自らが描いた挿絵が豊富でしかも“ゆるかわ風”で当時の雰囲気を想像しながら読みました。特に笑えたのはお城での御能の見学。江戸時代の人も長時間の正座(それも石畳に!)には苦しんだんだな、と。そして衝撃的だったのは上野戦争のときの惨殺死体を目撃したときの描写。戦死体というより猟奇殺人の犠牲者といった感じ。駿府→群馬→上野と転居して職を変え懸命に生きた一幕末武士の人生ドラマ。2021/08/18
akiakki
4
リストラ戦記と題しても、内容は下級武士の山本政恒から見た幕末から明治の生活です。自分史を元にしているため解説以外では偉人の名前は登場しません。しかし武士としての誇りを失わず、かといってイデオロギーに殉じて死ぬこともなく、激動の時代を生き抜いた個人の記録でした。2022/06/07
しらたま
3
今も昔も生きていくのは大変です。 時代の流れで理不尽なリストラされても なんとか家族で生きていくために工夫をして頑張っているのが伝わってきます。挿し絵もgood2020/01/13