内容説明
母を信長に殺されて、数奇な生涯を絵筆に託した謎の天才、岩佐又兵衛。江戸初期の生命力と退廃美をきわめた絵師の妖しい魅力を、日本美術の権威・辻惟雄が読み解く。
目次
はじめに 又兵衛論の総決算として
第1章 伝記と落款のある作品
第2章 又兵衛の謎―没後の言い伝え
第3章 “又兵衛風絵巻群”の出現と論争
第4章 “又兵衛風絵巻群”の驚くべき内容
第5章 又兵衛と風俗画―又兵衛はどんな風俗画を描いたか
おわりに 又兵衛から浮世絵は始まった
著者等紹介
辻惟雄[ツジノブオ]
1932(昭和7)年、愛知県生まれ。東京大学大学院博士課程中退(美術史専攻)。東京大学文学部教授、千葉市美術館館長、多摩美術大学学長などを歴任。現在、東京大学名誉教授、MIHO MUSEUM館長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夜間飛行
178
豊頬長頤に酔眼…彼の描く人物は特徴的で、その画には庶民の黒い笑いとアニミズム(一木一草一石の情)がある。「山中常磐」では、衣を奪われた常磐の胸にニタニタ笑う賊が刀を突き立てる所や、牛若による仇討ちが凄絶で、見た瞬間息をのむ。この画と初めて出会った著者は、血腥さに弁当が喉を通らなかったそうだ。著者のいうように、信長に殺された母の姿を想いながら描いたか、或いはまた、無意味な殺戮、失われる命、屍の始末など、戦国乱世を駆け抜けた彼自身が見た情景かもしれない。ならば彼もまた画中の人である。浮世又兵衛の伝説、面白い。2024/09/16
姉勤
35
日本の「ゲルニカ」ともよばれる「大坂夏の陣図屏風」の作者であるとされる岩佐又兵衛。 戦国大名、荒木村重(信長に反旗し当人は逃亡、残された一族は誅滅)の生き残った息子という出自は シニカルを筆先に乗せる。こと残酷な描写は戦国を生き抜いた者の、人体に対する即物さと 対極の派手好みやフェチズムに強い注力を感じつつ。若冲、蕭白、暁斎に連なる癖のある絵師の先達的 印象。2021/10/02
Makoto Yamamoto
26
「奇想の系譜」に続いて辻惟雄二冊目。 今回は岩佐又兵衛に絞られていた。 江戸初期にこれほどの画家いたとは驚いた。 著者によれば浮世絵の創始者菱川師宣にも影響を与えたとか。 個人的には表紙の山中常盤御膳絵巻より舟木屏風の洛中洛外図の方が好み。 新書版サイズの写真は小さいので虫メガネを使いながら必死だった。2021/05/03
はちてん
25
出光美術館で又兵衛の業平と源氏などが展示されているので、見に行く前に再読。又兵衛の描く『顎』が気になる気になる。 この本では陰惨な又兵衛が多く取り上げられている>山中常盤など2013/05/09
なる
20
菱川師宣より先、浮世絵の源流と言われている謎の絵師である岩佐又兵衛。戦国武将である荒木村重の息子としての経歴を持っている、というくらいしか知らなかったのだけれど、その作風の面白さに一気に引き込まれる。『雲龍図』や『虎図』などのダイナミックな作品もあるけれど、個人的には、例えば源義経の母である常盤御前の悲劇を描く『山中常磐物語絵巻』や同じく敵討を描く『堀江物語絵巻』といった、鮮やかな色彩による残酷な描写が圧倒的。荒木村重の一族が皆殺しにされたという幼少時の記憶が作品に影響を与えているのかもしれない。2025/12/05
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