内容説明
いかにして三角寛は“サンカ像”を捏造したのか。彼らは、どのような人びとであったのか。執念の追跡の末に、関東在住の元サンカ20家族と交流。浮かび上がる本当の姿。
目次
第1章 『サンカ社会の研究』の出版
第2章 サンカ写真集の虚構と作為
第3章 被写体となった人びと
第4章 三角サンカ論は虚妄の物語
第5章 三角寛は、なぜ偽りを語ったか
第6章 三角寛こと三浦守の生い立ち
第7章 新聞記者から小説家へ
第8章 漂泊の民サンカの真実
第9章 サンカ資料は、なぜ少ないか
おわりに―ある家族の系譜
著者等紹介
筒井功[ツツイイサオ]
1944年、高知市生まれ。元・共同通信社記者。主に社会部に籍を置き、司法、事件担当が長かった。42歳で退職後は民俗学関係のフィールド研究をつづけ、現在は非定住民の生態や、白山信仰の伝播過程の取材に当たっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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広末涼子は、もう私の妻になるしかないと思う寺
70
先日、三角寛の『山窩奇談』(河出文庫)を読んで大変面白かった。「鉄は熱いうちに」とばかり、興味の醒めない間にこれを読めたのは大満足。著者が文藝春秋に持ち込んだ企画らしいが、本書もかなり面白い。三角寛の研究書が川口浩探検隊張りのインチキである事を見事に暴く。創作だらけである。そして三角寛の経歴詐称疑惑。博士号は金で買ったようだ。最後に驚いたのはサンカはまだいるという事実。8年前の本なので、どんどん事情は変わるだろうが驚いた。都市部は日本の一部なのに、都会の通常で物事を見る我々の常識を突かれた。良い。2014/04/10
つちのこ
33
普通社会とは全く異質の慣習、信仰、独特の文字と掟、隠語を使う秘密結社のような集団…三角寛が作り上げたサンカ像である。三角の著作からサンカを知った私は、礫川全次氏や本作品の著者の本を読まなければ、そのまま信じていたはずだ。活字の力はつくづく怖いと思う。虚構に塗り固められた誤った事実を、百科事典に記載されるほど、後世にまで影響を与えた三角の罪(あえて、言う)は限りなく重い。無籍、無宿、文盲の山の漂流民・サンカは、かつての我が国に間違いなく存在していたが、今ではその影を追うことすらできない。⇒2023/01/28
kinkin
31
三角寛の『山窩奇談』の参考にと読んでみた。著者は、三角寛のサンカ像はほとんどがねつ造されたものあると書いている。『山窩奇談』を読んでいると話は確かに面白いのだが、サンカ独特の言葉が多く使われたり、少し眉唾的な部分もあると感じている。三角寛のサンカと著者のサンカに対する認識の食い違いが、浮き彫りになっており改めてサンカという存在について、興味がでてきた。2014/06/07
OHモリ
18
・日本に「サンカ」と呼ばれる住所不定で流浪生活をする謎の集団がいたらしいと知って本を検索して借りた図書館本。 ・「サンカ」研究の専門家で隊1人者とされている三角寛さんであるが、実は彼の著作はほとんどが捏造で虚偽報告であってそれを論証するという内容の本だった。三角さんの生い立ちや経歴についても述べられているが、だから分かり易いともいえるけどフェアではないような気がしないでもない。とは言え。捏造は疑いようもない事実のような気がする。学位論文を出したりせずに小説家としてのみ名を残すべきだったのではないかと思う。2024/10/31
amabiko
6
「三角サンカ論は虚妄の物語」であることを、多くの視点から丹念に解明する。事前に三角『山窩物語』、礫川『サンカと三角寛』、三浦『父・三角寛』を読んでいたので随所にわたって楽しめた。ただ、文体が厳し過ぎる。虚妄に満ちた三角論を完膚なきまでに叩くには、これくらいの筆鋒の鋭さが必要なのかもしれないが、時に読んでてつらくなる箇所も。三角は元新聞記者、本書の著者も元記者。三角の取材や「研究」の方法がどうにも我慢がならなかったのだろう。いずれにせよ、本書により三角のサンカ論が「論」として成立しないことが明らかとなった。2018/09/03