内容説明
史上初めて自らの人生を曲に託したモーツァルトの音楽は、生涯の三つの事件によって変化したという。その三つとは…。天才伝説を覆す画期的考察。珠玉のCD紹介つき。
目次
プロローグ
第1章 神童とその父
第2章 旅が育てた才能
第3章 イタリアでの栄光
第4章 ザルツブルクの鬱屈した日々
第5章 ミュンヘン、マンハイム、パリ
第6章 独立
第7章 成功と没落
第8章 哀しみを語る音楽
エピローグ
著者等紹介
中野雄[ナカノタケシ]
1931年、長野県松本市生まれ。東京大学法学部卒業。日本政策投資銀行を経てオーディオ・メーカーのケンウッド役員に就任、代表取締役。昭和音楽大学・津田塾大学講師を歴任。現在、映像企業アマナ等の役員を務める傍ら、音楽プロデューサーとしても活躍。ピアニスト宮澤明子を起用して、日本最初の『モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集』を企画制作(1973年)。「ウィーン・モーツァルト協会賞」等、内外で受賞多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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naoっぴ
66
ミュージカル「モーツァルト!」とシンクロする内容に、舞台の感動を思い出して心が浮き立つ。モーツァルトの父レオポルトが、素晴らしいヴァイオリン演奏家であり音楽の師匠でもあった環境により、モーツァルトの作曲の才能はどんどん磨かれていく。当時の音楽はいわば今で言うドラマBGMかCMソングのような使い捨てのものであり、モーツァルトの名曲はそういう土壌で多数生み出されていったわけだ。当時の時代背景と人間関係、書簡のやり取りなどはまるで物語を読むよう。親しみやすい内容で楽しめた。2021/05/03
sankichineko
17
作曲家でも演奏家でもない、音楽プロデューサーならではの視点で書かれています。人を教育すること、良い教師を見つけること、後ろ盾を得ること、仕事を得ること、そして興行について、冷静かつ愛情に満ちた描写が印象的です。お勧めCDも紹介されていますが、持っているものもいくつかあり、ちょっと嬉しくなりました。2015/08/09
小瑠璃
10
新書を自ら進んで買って読むのは初めてかもしれません。読みやすくて面白い本でした。ミュージカル『モーツァルト!』を年始に見て、モーツァルトの一生を総括的に知りたくなって手に取りました。同じ欲求にかられてる方がいたら、おすすめします。何というか、作者の視点が誰もに優しい。モーツァルトはもちろんのこと、レオポルドも、コンスタンツェも、コロレド司教でさえも、この作者さんの筆にかかると、みんなが憎めない人物になり、嬉しいです。モーツァルトへの愛はすごく感じるけれど、それでいて冷静な視点は失っていないのも素敵です。2015/01/09
misui
5
モーツァルトのパブリックイメージが「天才」で、しかしその天才性も理由なきにあらずと教えてくれる。ディスクガイドとしても重宝。モーツァルトが生きた時代の音楽家はあくまでも使用人であり、いくら個人の心情を音楽に託しても市場=貴族社会の受けは悪かった…というのが一番つらい。2023/11/10
還暦院erk
5
図書館本(一度見かけて借りようとしたら図書館カード忘れててすごすご引き返したことあり)。情報量が多いのにわかりやすく、古い盤も含む名演CDの紹介が親切でためになった。早速、5~8歳時作曲のK1~20あたりをいくつか聴いてみたら完成度高くて美しく、改めてびっくり!モーツァルト…恐ろしい子(白目)!さて、本書にはモーツァルトの生涯に渉る旅を一覧できる地図が欲しかったかも。わたしは世界地図を参照しつつ読んだが、結局『音楽大事典』の地図のお世話になったから。しかし旅のスケールを知ることが出来たのは大収穫だ。2018/03/08