内容説明
高度成長は石油ショックで終わったのではない。田中角栄の登場で死んでしまった。高度成長の主役は都市の製造業であったのに、都市が実現した経済成長の果実を農村に有利に再配分。公共投資を「都市」から経済効率の悪い「地方」へ傾斜配分することで、地方から都市への人口移動の激減を招き、成長率の急激な低下をもたらしたのだ。税制改悪、大店法、持ち家政策、年金、鉄道ネットワークなど、様々なキーワードを軸に独自の視点から日本経済を振り返り、古き良きあの高度成長を殺したのは誰だと告発しながらも、人を大都市圏に集めれば復活できると提言する。
目次
1 日本経済はどこで間違ってしまったか
2 誰が高度成長経済を殺したのか
3 実行犯は田中角栄
4 「弱者」をふやしたがる「黒幕」たち
5 「弱者」のための利権連合がつくった世界
6 高度成長は復活できる
著者等紹介
増田悦佐[マスダエツスケ]
1973年一橋大学経済学部卒。同大学院経済学研究科修士号取得。ジョンズ・ホプキンス大学大学院経済学部・歴史学部博士課程修了。ニューヨーク州立大学バッファロー校経済学部助教授、ユニバーサル証券、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券を経て、現在はHSBC証券のシニア・アナリスト
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感想・レビュー
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ぶらり
4
池田先生いわく、今流行の「デフレの正体」を読む前にこの本。70年代の高度経済成長後期の政治経済情勢を「田中角栄の政治手法」を軸に判りやすく解説。田中角栄の「弱きを助け、強きをくじく」分配論が高度成長の終焉に止めを刺したというストーリー展開はダイナミック!が、人に責任を押付ける思考では未来思考は無理。6章は貧弱。資本主義システムにおける地域間格差は古くからの「問題」で実は処方箋もある!土地税制を利用基準に革新するのだ。インフラ整備の恩恵が地主の不労所得になる仕組みは格差の根源。劇薬要注意だが…役人頑張れ!2010/11/17
ヨンデル
1
昔読んだ本です、整理のため登録しています。2024/07/10
Kentaro
1
地方から都会への合理的な集中が行われず、経済は成長から衰退に下降し、環境も企業や工場の地方進出で公害も全国に拡がってしまった。 都市化は過疎化を生み、悪いことととらえる向きが多いが本当はそうではない。都市化こそ経済発展のもとであると強調した一冊でした。 本書は田中角栄の金満体質ではなく、共産主義的富の不正分配が悪であると主張した珍しい主張だなと感じました。2017/06/28
greenman
1
本書のタイトルからとても前向きな経済論が本書の中心かと思えば、戦後経済の中でも特に高度経済成長期についての分析といった内容で、なぜ高度経済成長があったかという問いよりなぜ高度経済成長が終わってしまったかを中心に描いている。その犯人は田中角栄で、彼は資本主義を強い者は我慢して、弱いものに分け与えることだと信じていたが、それは社会主義的な思想だった。また「利権経済」や「特定財源」を認めることで、革命を成し遂げたが、その結果政治家・官僚や弱者の顔をした地方自治体が現れて「利権」を吸い取る状態になってしまった。2012/06/04
complexmachine
1
弱者保護という耳当たりの良い言葉が,いかに日本を狂わせているか。「金の為にあくせく働くことは尊いことではなかったか」2010/10/22