内容説明
エシュロンとは、アメリカが中心になって全世界にはりめぐらした通信傍受ネットワークをさす。電話やファックス、電子メールから通信衛星、海底ケーブルの盗聴などで暗躍。以前はターゲットを軍事機密に限っていたが、冷戦後の現在はアメリカ経済の利益をはかるために企業や民間情報を盗聴し、経済戦争の新兵器と化している。アジア通貨危機や様々な国際取引の裏で見え隠れしながらもベールに包まれていた怪物の正体に迫り、情報戦争の実態を暴く。
目次
第1章 通貨危機とエシュロン
第2章 通信傍受のきわだった技術
第3章 エシュロン誕生までのドラマ
第4章 エシュロンをめぐる戦い
第5章 狙われるアジア
第6章 国家安全保障戦略
第7章 各国の情報戦略
著者等紹介
鍛冶俊樹[カジトシキ]
1957年、広島県生まれ。軍事ジャーナリスト。83年、埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊。情報通信関係の将校として十年間の勤務を経て一等空尉にて退職、評論活動に入る。95年、「日本の安全保障の現在と未来」で第一回読売論壇新人賞佳作に入選
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感想・レビュー
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Ted
6
情報畑出身らしく分析が的確。アングロサクソンの諜報に対する感覚には図抜けたものがあり、その執念は並大抵ではない。これにはアメリカでさえ後塵を拝さざるをえないようだ。傍受の手段も勿論だが特にその「活用の仕方」に、我々には想像も及ばないある種の“発想”があるように感じる。その源が何に由来するのか追求してみる価値はありそうだ。「国家が通信網の整備に力を入れるのは、通信傍受が目的ではないかと思わせるほど、両者は不可分の関係にある」。なるほど、ネットや携帯は、自ら進んで傍受してくれと言っているようなものだ。2011/07/08
水無月十六(ニール・フィレル)
3
アメリカが中心になって全世界に張り巡らせているという通信傍受ネットワークエシュロンについての論考本。膨大な資料や当事者の聞き取り調査などを元にした奥深いものを期待しすぎた。内容としては正直なところ理論上そういうことが可能であるとか、事例をつなぎ合わせた時にエシュロンの存在があれば結構辻褄が合うくらいのいわゆる巷の陰謀論的程度のもの。以前Twitterで読んだ情報畑の出身者が、現職を退いて一次情報に触れられなくなった途端、断片情報から陰謀論を振り撒く存在になってしまいがちという話を思い出しながら読んだ。2022/03/26
たかひー
3
★★★★ 他の感想にもあるとおり、内容が内容だけにどこまでが事実なのかが証明できていないのが残念でもあり、だからこそ完全には信じきれないものの、エシュロンにいたった背景等も説明されており、非常に興味深く読んだ。2014/11/10
unflyable
2
エシュロンをテーマに陰謀論にありがちな個々の事象を統一された意思に基づくものとしている本。特に独自取材もなく公開情報を都合よくつなげているだけなので、これといって見るべきところは無い。スパイものの小説として読む分には面白かった。2016/11/27
駒場
2
経済面などを含んだ国家の安全保障に情報組織の活躍は不可欠であることがよく分かるエシュロン通史。世界で繰り広げられる情報戦争について、第一次・二次大戦まで遡って解説している。日本にはスパイ防止法すらないという現状を筆者が歯痒く思っているのが伝わってくる。日本の安全を考える際に読んで損はないと思う。もう一歩踏み込んだ提言が欲しいところではあるけど2012/05/31