内容説明
この百年の間、日本は多くの戦争にかかわった。日露戦争、第一次世界大戦、シベリア出兵、満州事変に端を発する日中戦争、そして、太平洋戦争。世界で最も平和を謳歌しているように見える戦後でさえ、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争などは日本の国家、社会に大きな影響をおよぼした。平和を美しく語るのもいい。しかし、破壊と大量殺人をともなう戦争という人間の営みを正面から見つめることなくしては、新しい時代の平和は決して語れない。文芸春秋読者賞受賞。
目次
第1章 日露戦争―近代との邂逅
第2章 第一次世界大戦―「総力戦」の世紀
第3章 満州事変―終わりなき暴走
第4章 太平洋戦争―混迷と陶酔
第5章 湾岸戦争―残された課題
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おらひらお
5
2000年初版。20世紀におこった戦争と日本のかかわりについて5人で行った座談会の内容を収めたものです。教科書の内容とは異なるもっともな意見が満載なので、高校生程度から読んでもらいたい一冊ですね。なかでも、生まれも育ちも考え方もエリートである人物の欠乏の指摘は重要ですね。もちろん、育てて育つものではないかもしれませんが。ところどころで出てくる官僚的対応が日本を悪い方向へ導いているとの指摘は原発問題を抱える現在にも通じるところありですね。21世紀も戦争に参加することなく過ごせていくのでしょうか・・・。2012/07/01
Hiro
4
日清戦争以降の日本の戦争体験についてその国家としての対応の仕方を学者、評論家、軍人作家という各界の五人が議論したもの。様々な指摘、情報に啓発されたが、なかでも民間の活用が戦前の日本軍ではおろそかだったという。英米は例えば軍の兵站や情報部門には軍人ではなくその方面の民間企業の実務者を登用したが日本では左遷された軍人が配置され民間人は専門性を問わず一兵卒にされた、というもの。戦争のコツが分からないのだからやはり戦争すべきではなかったのだ。本題は最後の9条問題だが私は本書の各論者には与しない。2024/12/08
depo
4
積読本。「一億玉砕」を叫んでいた者達の脳裏に天皇陛下も入っていたのだろうか。面白いと思ったのは「日本は明治以来現在まで借金を踏み倒したことがない。日本と独逸だけですね。あとの国は全部踏み倒している」という秦さんの言葉である。やはり日本人の心性として「約束は守らねばならない」というのがあるということだろう。2021/02/13
go
2
結局引けない民族なのかね日本人は。精神論に流されやすいというか。優秀なリーダーさえいればまた別だったのかもしれないけど2020/12/28
ダイキ
2
「二〇三高地の激戦中、死体を片付ける時間は休戦となる。双方、白旗を掲げて作業を終え、両軍兵士が日本酒とウオッカを傾けて、われら日露の二国がいっしょになれば、イギリスでもドイツでも簡単にやっつけられるぞ、と互いの健闘を讃えあった。武士道なんです。ロシア人にもそんな古いところがありました。そして休戦の時間が終わると、また撃ち合うんです。牧歌的であったといえばそうなんですが、夥しい死体を片付けてもいるわけですから悲惨といえば悲惨なんですけれど、ルールを信頼し合っていた。」〈第一章 日露戦争・猪瀬直樹〉2018/05/21