出版社内容情報
"国際特許戦争"の勝者はやはりアメリカなのか? プロパテント(特許重視)政策の狙いとは何か?特許制度の明暗を浮き彫りにする
内容説明
西暦2000年、世界は本格的な「プロパテント時代」に突入した!アメリカが80年代の莫大な貿易赤字から脱出できたのは、まさにこの「プロパテント(特許重視)政策」による。対する日本は、日米企業間の特許訴訟にことごとく敗れ、何百億円という巨額の和解金を支払い、撤退を余儀なくされている―。本書は特許の基本的知識から国際戦争の凄絶な舞台裏まで、二十一世紀経済戦略の新しい局面をわかりやすく解説したものである。
目次
序章 いまなぜ特許が問題なのか(誰のための特許か?;真の発明者は誰だ? ほか)
第1章 特許制度の誕生―「独占」と「革新」は両立するか?(ルネッサンスに誕生した特許制度とガリレオの懇願;イギリス産業革命の原動力となった近代特許制度 ほか)
第2章 日米特許戦争の勝者と敗者―真の発明者は誰だ?(日本人と特許権;日米特許戦争の勃発 ほか)
第3章 プロパテント時代の傾向と対策―誰のための特許か?(アメリカのプロパテント政策の真意;潜水艦特許と物質特許の波紋 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ごへいもち
16
結局人口の多い国が強いんだな2016/01/25
B.J.
4
●特許は、独占権が得られるといっても、一定期間(20年間)という制限がある。 ●著作権は著者の「表現」を保護しているのに対し、特許権は発明者の「アイデア」を保護する目的がある。 ●日本の特許法第二条第一項には、発明の定義がなされている。それによれば、「発明とは、自然法則を利用して創作されたもの。」と定められており、それが特許対象の大原則となっている。計算方法(数学のアルゴリズム)や経済法則などは、自然法則を利用したものではないため、特許の対象とはならない。・・・本文より 2020/02/25
xasquithx
0
17世紀イギリスで最初の特許制度”専売条例”が制定され、産業革命の原動力になった。アメリカでは、南北戦勝終結の1865年から第二次世界大戦までプロパテント政策を採り、世界経済のリーダーとなった。1980年代、台頭する日本、東南アジアの影響でアメリカは不況に陥る。1985年のヤングレポートを機に、極端なプロパテント政策を実施し、国際競争力を取り戻した。アメリカの特許政策は常に自国の利益が基準であり、公平という精神がない。特許の世界的統一に対する議論が始まった現在で、その姿勢は非難されて当然である。2016/07/18
ドリアン・グレイ
0
著作権と特許権の違いも知らなかったがこの本を通してその違いからアメリカの通商戦略までよくわかる。特許法(独占)の対極に位置する独占禁止法との関係を見ることで初めて特許制度を認識できるとのこと2015/12/15
boya
0
アメリカのプロパテント政策の思想と、それに対する問題提起が本書の最も重要な指摘だが、国際特許時代にいたるよりも前、近代までの特許黎明期のエピソードもおもしろい。発明者として名高いガリレオやエジソンのしたたかな「先見ビジネス」の紹介は読み物として楽しめる。そうして特許をビジネスとして作り上げてきたアメリカは、いまや「不公平な均等論」を支持し「先発明主義を発明」するに至った。知的所有権は、いつでも政争の具とされ翻弄され続ける不幸な夢のようだ。2010/10/10