出版社内容情報
片や名君と讃えられ、こなた生類憐れみの令を悪法と謗られ……似通う経緯で首座に就いた光圀と綱吉、両者の運命を分けたものは?
内容説明
かたや修史事業に力を尽し理想の名君と讃えられてきた水戸光圀。こなた生類憐れみの令により稀代の暗君と罵倒される徳川綱吉。ほぼ同じ時代を生き、ともに三男坊でありながら主座に就くことになった両者なのに、後世の評価に天と地ほどの落差が生じるとは―。ふたりの運命を分けたものは何だったのか。史料の森に踏み入り手さぐりで見つけた真の姿が、三百年の時空を超えて今、立ち上がる。
目次
光圀ノ巻(大義チガヒ申ス―兄を超えた苦しみ;あひ憚る儀御座候て―密室の秘事;万歳を唱へて、とよめく―演技する君主)
綱吉ノ巻(有栖川殿を御代つぎとせん―幻の宮将軍;人々仁心も出来候様に―新政に賭けた夢;鴨ノ手紙差出ス―迷走する生類憐れみの令;天くらくして大地鳴りわたり―あいつぐ天災;前代の事をよく言はざる―新井白石の罪)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
16
光圀と対比しつつ、綱吉の功績は歪められたという部分は正しいか否かはともかく面白かったです。2024/07/22
ちばっち
6
たまたま手に取ったのですが当たりでした。冲方さんの光圀伝を読んですっかり黄門様のファンになったのをガラガラと崩されてしまい(笑)、でも最後にはやっぱり素敵!と思わせてくれました。綱吉も犬公方とかマザコンとか可哀想なイメージしかなかったのですがそれがどれだけ新井白石を信用するあまりのフィルターだったのかを知り、どれだけ綱吉が真摯に政治に取り組んだのかを証明してもらって目から鱗が落ちました。山室さんの鋭いツッコミと愛ある目線が素敵でした。他の本も読んでみたいです。2018/06/07
ゆきこ
6
黄門様として親しまれている水戸光圀と、犬公方呼ばわりされている将軍綱吉。同じ時代に生きた二人の本当の姿と、後世における評価に大きな差がついてしまった原因を考察する1冊。まず、とても読みやすい文章であり、内容がすんなり頭に入ってきたところが良かったです。色んな史料をもとに2人の人物像に迫っていく様子が、まるで推理小説を読んでいるかのようで楽しかったです。知れば知るほど綱吉公に魅力を感じます!2016/07/06
とりもり
5
末弟から主座につきながら、かたや名君として称賛され、かたや犬公方と蔑まれ続けている対象的な二人。でも、実態は相続の"よじれ"を弁明するシナリオを熱演することで「黄門伝説」として名を残した光圀と、生類を憐れみ、以て人々の仁心を涵養して殺伐たる戦国の遺風を払うことに成功しながら、新井白石の前代を貶める記録によって、暗君として長年語り継がれ続けることになる綱吉。こうして史料を丹念に読み込むことで、知られざる実像を明らかにした著者の功績に拍手。是非教科書も修正して綱吉の汚名をそそいであげて欲しい。★★★★★2018/11/25
手ぬぐいゲッター
4
歴史上の人物って真実が伝わってないことがあるんですよね(評判が悪い人って事実が歪曲されていたり本質が理解されていなかったり)。山室さんは真実を追求しようとしているところが好感を持てます。この本は水戸光圀と徳川綱吉の真実を知るのに良いと思います。綱吉さんはバカ殿ではないということが分かりました。2012/07/15