出版社内容情報
絶筆を含むエッセイ集。最後まで溌剌としていた向田邦子。放送作家としての生活のこぼれ話や、大好きだった旅の記録や食べ物の話も。
内容説明
絶筆となった「クラシック」を含むエッセイ集。
目次
チャンバラ
蜘蛛の巣
昆布石鹸
動物ベル
糸の目
買物
香水
白鳥
セーラー服
骨〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shiozy
28
アマゾンから本が届かないローテンションの谷間に、決まって読むのは向田邦子。何度読んでも感心させられるのが、「段落の飛躍」である。段落ごとに様々なエピソードが提示される。それは一見、何の脈絡もないように見えるのだが、最後にテーマが語られると、そのエピソードの意図が一気に貫通するのだ。こんな文章をお手本とするのだ。2015/11/13
ぐうぐう
15
彼女のエッセイを読んでいると、向田邦子とはつくづく市井の作家であったことがよくわかる。目線が、実に庶民的なのだ。例えば、「ホームドラマの嘘」というエッセイの中で、彼女は視聴者がホームドラマの中の嘘を指摘するのを踏まえ、それは当然だと説く。なぜなら「視聴者全員がホームドラマの経験者だからなのです」。そこで彼女はドラマの嘘を自ら披瀝し、その嘘を楽しんでほしいと呟くのだ。それはつまり、作り手でありながらも彼女の目線が視聴者が見つける嘘の側にあるからだろう。彼女のドラマが視聴者に歓迎された理由がここにある。2010/09/23
たつや
6
あ~面白い。ホームドラマの裏側で悠木千帆の名前が出た時、一瞬誰か分からず、数秒後に、樹木希林の旧芸名かとわかった時は快感でした。他に旅の隨筆多し。モロッコ、沖縄、はてはアフリカまでよく行くなと感心する。一つ一つ、ものの見方、感じ方が、向田邦子らしく、面白く読めました。2025/02/23
きゅー
4
放送作家の適正は、胃腸が丈夫、おしゃべりで楽天的、嘘つきであることらしい。視聴者からどんな文句が届いてもドンと弾き返す心の健康さが必要なようだ。ドラマのセリフで「女は結婚すると、歩きつきまで変わってしまう。娘時代はハイヒールをはいて颯爽と歩いていたのが、サンダルを突っかけて、パタコンパタコン言わせながらスーパーへ」なんて書こうものなら、テレビ局へサンダル屋のお偉方が抗議にくるという。笑っちゃう話だが、いまならコンプライアンスなんて大層な言葉でもって苦情を言われるのかも。2024/12/17
きみさん
3
全集なのに、厚くなくて就寝前読書もOK!著者が気楽にすいすい書いているのが分かって、こちらも肩こらずに読めるのがうれしい。外国での著者の立ち位置については、ちょっと意外だったが、読み進むにつれて納得。 もっともっと長生きしてほしかった。昭和の雰囲気満載の作品群は懐かしいが、この平成の世を向田邦子さんはどのように思っていることだろう?2014/11/08