内容説明
直木賞受賞作をふくむ傑作短篇集。小説13篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆきち
74
向田さんの没後40年の特集をテレビでみて、手に取りました。エッセイは読んだことがあるけれど、小説は初めてです。『かわうそ』『だらだら坂』『はめ殺し窓』『三枚肉』『マンハッタン』『犬小屋』『男眉』『大根の月』『りんごの皮』『酸っぱい家族』『耳』『花の名前』『ダウト』の13編と、太田光さんと諸田玲子さんの解説がついていました。『ジワジワビショビショと涙が溢れた。』『水枕は、耳の下でキシキシと音を立てている。』などとといった言葉の使い方がなんだか心に残りました。『大根の月』の終わりが、ほろりとして好きです。2022/09/04
たつや
29
一度、向田邦子を読みたいと思い、図書館で「あ・うん」を借りようと行ったら貸し出し中だったので、初めての向田作品は何にしよう?悩んだ挙句、全集の1巻ほかをチョイス。とても読みやすく、よかったです。タイトル通り、13篇の短編をシャッフルしたということでしたので、順番を気にせずに気分で読みました。でも、若くして亡くなられたんですね。もったいない感じです。この才能が・・・。今の私より、数歳年上で、亡くなっているので、そう言う意味では近く感じます。こういうサバサバしたお姉さんが身近にいたら頼もしく、懐かしく感じます2016/07/18
ゲオルギオ・ハーン
20
学生の時に教科書で1作読んだ記憶はあるが、どういう作風なのか記憶がなかったので全集(短編13作収録)でまとめて読んでみた。穏やかな日常風景を描写しながら登場人物たちの心にある小さな闇が印象的。それが刺激的な毒として効いていて面白かった。特に印象に残ったのは、ホラーっぽく締めた「かわうそ」強くて憎たらしかった自身の母に似た自分の娘が浮気されることで心が晴れやかになるという微妙な心情を表現した「はめ殺し窓」子どもがいる身としては薄ら恐ろしい「大根の月」クセになる毒っ気が気に入りました。2025/01/26
ぐうぐう
16
優れたシナリオライターが、優れた小説家であるとはかぎらない。でも向田邦子の『思い出トランプ』を読んでいると、その一般的な常識が覆される快感を覚える。トランプのカードを模した13の短篇は、見過ごしてしまう、または目を逸らしてしまいがちな人間の邪さや弱さや悪意が描かれている。しかし彼女はそれを直接的なエピソードとして書こうとはしない。はめ殺しの窓や、眉の形、花の名前から、象徴的に滲ませていく。脚本家としてのユニークな着眼点が、繊細で豊穣な小説として開花した、これはロイヤルストレートフラッシュ級の短編集だ。2009/06/10
chacha
14
テレビで向田邦子没後40年特別企画を観てから読んでみたくなった。ドラマの脚本家で知られているけど文として読んだことがあまりない。昭和の55~56年頃に書かれたものが集められた1冊。出てくる言葉や場面はちょっと古臭く感じたりするが 人が表立って言わない内面のとこれは書かないでおこうと思うようなことが言葉にされている。さらりと書く余計なものをそぎ落としたように書く 怖いけど上手いと思わせる。二巻も読んでみよう。2021/12/01