出版社内容情報
有吉佐和子が20代頃に書いた自負溢れるエッセイや後年のルポ、岡本かの子が夫・一平、息子・太郎そして自分を綴った文章の数々。
内容説明
ベストセラー作家・有吉佐和子の若き日の随筆と、マイノリティーの視点が光るルポルタージュ、歌人、小説家として生を燃焼した岡本かの子が夫と息子について書いた文章、書簡を中心に編む。
目次
有吉佐和子1 二十代の随筆(花のかげ;イヤリングにかけた青春 ほか)
有吉佐和子2 ルポルタージュ(関連地図;女二人のニューギニア(抄) ほか)
岡本かの子1 一平・私・太郎(親の前で祈祷―岡本一平論;岡本一平の逸話 ほか)
岡本かの子2 紀行文など(黙って坐る時;跣足礼讃 ほか)
岡本かの子3 「母の手紙」抄(「滞欧中の書簡」より(昭和五年)
「東京から巴里への書簡」より(昭和七年‐十三年))
著者等紹介
川上弘美[カワカミヒロミ]
1958年、東京都生まれ。お茶の水女子大学理学部卒業。96年、「蛇を踏む」で第115回芥川賞を受賞。2001年、『センセイの鞄』で第37回谷崎潤一郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まつこ
43
有吉佐和子さんの『女二人のニューギニア』は爆笑してしまいました。むしろなぜあの時代に未知の国へ行ったのかツッコミながら。文章の冷静さと事実の波乱が効果的に私のツボを刺激してくれました。一方、岡本かの子さん。息子は名高い太郎さん。溺愛っぷりが手紙から伝わってきて、ちょっと引き気味に読みました。でもお二方の生き方の激しさと女性としての真核が見えて、少し羨望の眼差しを向けました。2015/11/02
あじ
42
長編小説の執筆に精力を傾けていた佐和子の随筆は、数が少ないそうである。その中から選出されたルポ『女二人のニューギニア(抄)』は、都会暮らしで鈍った身体を死に物狂いで運び、ジャングルを掻き分けて行く話だ。手の甲に吸い付いた山蛭を騒ぎ立てずに無言で取り去るほど、気力を失った佐和子に苦笑が止まらない。景色を眺めたり鳥の声を聞く余裕のない旅路に、創作意欲の“限界”を越えた瞬間が訪れる。一方岡本かの子の随筆選は、夫や息子(太郎)に宛てた書簡多し。【川上弘美 選】2017/01/10
ぐうぐう
19
有吉佐和子が、ほとんど随筆を書いてこなかったというのは、なんだかよくわかる。本来、作家の肉声が伝わりやすいエッセイが、逆に有吉にとっては誤解を生み、小説こそが有吉の血肉であることを彼女に自覚させたのだろう。この『精選女性随筆集』には、有吉のエッセイがかろうじて数本収録されているが、大半を占めるのはルポルタージュだ。このルポでは、エッセイとはまるで違う、また小説とも違うニュアンスの彼女がいる。まさしく有吉佐和子の肉声が聞こえてくるのだ。(つづく)2013/05/30
Matoka
12
岡本かの子の太郎に宛てた手紙がよかった。こんな風に本になって他人の目にふれるなど想像もせずに書かれた母から子供への手紙。芸術家から芸術家への手紙。ものすごく愛に溢れてる。貧乏だと嘆きながら週に一回ウナギを食べお手伝いさんもいる暮らし。この時代の日記とか手紙が大好きなのでもっともっと読みたい。2023/12/24
冬見
12
岡本かの子目的で買ったけれど、有吉佐和子のルポルタージュが期待していた以上におもしろくて、良い買い物をしたなあと大満足。時に笑い、息を呑み、わくわくしながらページを捲った『女二人のニューギニア』は抄での収録だったので、次は全編読みたい。小笠原諸島を描いた『遥か太平洋上に』では、生々しい戦争の傷跡を目の当たりにし、わたしたちが目を逸らしてはいけないもの、知るべきことについて思いを巡らせた。あの時代、そこで何があったのか、どうしてそれが起こったのか、その後どうなったのか。点ではなく線を。生の声を。2019/05/10