出版社内容情報
召集令状のからくりを知った男の戦後の復讐を描く「遠い接近」。昭和初期の小倉を舞台に文学青年達をめぐる殺人「表象詩人」ほか「山の骨」「生けるパスカル」「高台の家」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
グラスホッパー
8
「生けるパスカル」女性関係を繰り返す画家の夫と、嫉妬に狂う妻の物語。パスカルの妻は悪妻だったという。狂気の妻と別れるために、あることをしかける。 「遠い接近」招集令状の仕組みと、旧日本軍の愚かな実態。そして戦後に綿密に計画して復讐する。長編だった。 「山の骨」2体の白骨をめぐり謎が明かされる。 「表象詩人」タイトルがエレガント。小倉時代の著者を彷彿させる。文学への眼差しを取り入れながら、娯楽小説に仕上がっている。 39 巻は、タイトルと内容が秀逸ぞろいだ。読書の楽しみを味わった、40年ぶり再読。最高!2024/03/03
zatugei
2
「死せるパスカル」「遠い接近」「表象詩人」等々、いずれも結構長い作品。どれも推理小説の体裁をとっているけれど、むしろそこに追い込まれる人物の心理を丁寧に描いている。特に「遠い接近」は軍隊組織とその召集システムを解説している点で貴重。2021/06/10