内容説明
断ち切れぬ相手への想い、繋がる縁もわかれ縁も―。“離婚調停のスペシャリスト”たちが営む公事宿狸穴屋。自らも亭主に三行半を突きつけた絵乃が立ち向かう次なる難題は―?「心淋し川」「善人長屋」の著者が贈る江戸人情ものがたり。
著者等紹介
西條奈加[サイジョウナカ]
1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第十七回日本ファンタジーノベル大賞を受賞してデビュー。12年『涅槃の雪』で第十八回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第三十六回吉川英治文学新人賞、18年『無暁の鈴』で第一回細谷正充賞、21年『心淋し川』で第百六十四回直木三十五賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
133
公事宿・狸穴屋の面々にまた会えた。手代としての経験を積む絵乃の成長の物語でもある。短編六話(ラストの二話は連作)なんたって好みは四話目の『夏椿』短い中に壮年男女の機微がギューッと詰まって、してやられた感が堪らない。こういうのが大好きだ~(笑)次も楽しみに待ちたい。2025/03/25
チーママ
66
「わかれ縁」の続編。正式に狸穴屋の手代になった絵乃は新参者ながら公事師の仕事に精を出しているが…。今作は狸穴屋の得意とする離縁の調停話だけではなく、公事師を生業にする者たちのダークな側面も描いている。また御上は民百姓に訴訟の手段を学ばせぬために、公事宿にある必要書類の雛形を市井に漏れぬよう公事師らに厳重に保管させていたという。現代では考えられぬ酷い話にため息がこぼれた。2025/04/02
itica
61
『わかれ縁』の続編は6つの公事話。基本、今も昔も争いごとの根は変わらないように見える。そして裁き(結果)が出るのに結構な時間が掛かるのも同じだ。「夏椿」の妻のしたたかさに舌を巻き、「証の騙し絵」の結末にしんみり。私も騙されたクチ。しかし前回ほどインパクトがないのは続けて読んだせいかな。ドロドロやひと悶着のあとの狸穴屋主人のすっきりした采配、次も期待してます。 2025/04/06
hirokun
41
★3 公事宿狸穴屋シリーズの第2弾。西條さんは私の好きな作家さんの一人で、特に彼女の人情時代小説は好きな分野の作品だ。今回のシリーズは6作の短編集だが、話の展開が少し淡白で深みに欠けるように感じたのは私だけだろうか?短編の一つは、江戸時代にこんな事があったら痛快だろうなという作品もあったが、期待していただけに残念。また次の新刊が待っているが、この作品に期待したい!2025/03/31
みい坊
31
前作が5年前。確か橋のたもとで涙ぐんでいた絵乃が椋郎と出会って始まった物語だと思い出しながら読んだ。狸穴屋の手代として人と人の縁に関わる絵乃。結ばれる縁、切れる縁。そこに絡む人の思いに心を寄せて少しでも良い結果へと奮闘する姿は、縁の辛さも知っている絵乃だからこそと思える。「祭りぎらい」が好き。結ばれた縁の強さに1話目から涙ぐむ。「初瀬屋の客」からの最終話。椎茸の佃煮と背中を向けた日賀蔵の姿に結ばれない縁への想いが漂う切なさ。あんな事が無かったらと思ってしまう「わかれ縁」の余韻に思いを馳せてしまった。2025/04/14