内容説明
江戸川乱歩『D坂の殺人事件』の別解(!?)、遠藤周作『沈黙』の切支丹屋敷に埋まる骨が語ること、安部公房『鞄』を再現する男との邂逅、夏目漱石『こころ』みたいな三角関係…。風変わりな人たちと、書物がいろどるガールミーツ幽霊譚。
著者等紹介
中島京子[ナカジマキョウコ]
1964年東京都生まれ。2003年、田山花袋『蒲団』を下敷きにした書き下ろし小説『FUTON』でデビューし、野間文芸新人賞候補となる。10年『小さいおうち』で直木賞を受賞。14年『妻が椎茸だったころ』で泉鏡花文学賞、同年刊行の『かたづの!』で柴田錬三郎賞と河合隼雄物語賞、歴史時代作家クラブ賞作品賞を受賞。15年刊行の『長いお別れ』で中央公論文芸賞と日本医療小説大賞、19年刊行の『夢見る帝国図書館』で紫式部文学賞、22年『ムーンライト・イン』『やさしい猫』で芸術選奨文部科学大臣賞(文学部門)、『やさしい猫』はさらに吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
222
中島 京子は、新作中心に読んでいる作家です。本書は、坂道文豪オマージュ小説でした。 本日、偶然にも本書の舞台となっている茗荷谷&乃木坂に行きました。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639191572024/12/03
旅するランナー
209
主人公坂中真智が坂の中の町(東京小日向)に住む話。坂と文豪の話が長い志桜里さん(祖母の親友、でも実は…)の家に居候しながら、近くのO大学に通い始める。同学年のよしんばちゃん(おじいちゃん言葉が普通に出てくる)や、文芸サークルで知り合ったM大3年のエイフクさんら独特な世界観を持つキャラが面白い。江戸川乱歩、遠藤周作、安部公房、夏目漱石などを引用しながら、一緒に坂をてくてく上がり下がりしている気分になる。令和の「こころ」のようなしみじみとした滑稽な小説です。2025/01/05
hiace9000
171
文豪ゆかりの坂の町・小日向で繰り広げられる、心ほころぶ”半分”ラブストーリー。坂下真智は大学進学を機におばあちゃんの親友という志桜里さんの下で居候することに。ちょっと風変わりな人々との、ひょんにして稀なる出会いは様々な不思議追体験に繋がっていく。何とも形容しがたく、かといって決して嫌じゃない絶妙なる味わいを醸す不思議系日常、この心地よさはなにゆえ? 「坂小説」は、ほしおさんの『東京のぼる坂くだる坂』を既読。坂という地形だけでその歴史や背景からドラマが生まれる東京の懐深さを感じる。優しい中島筆にほっこり。2025/03/28
のぶ
158
中島さんの文学愛に溢れた作品集だった。進学を機に富山から上京した坂中真智は、祖母の親友である志桜里の家に下宿することになる。志桜里さんの語る昔話は興味深いし、言い回しもなかなか良いものがある。加えて、書物や文豪に縁のある土地が舞台っていうのも良い。作中に多くの坂が出てくるが、東京の地理に疎い自分はもどかしいものがあった。現代の物語を読んでいるはずなのに、明治・大正・昭和初期をタイムリープしている気分になる。不思議な男〈エイフクさん〉との関係も気になるところ。大きなことは起きないけど、こんな作風も悪くない。2024/11/28
ちょろこ
123
ふわっとした読み心地の一冊。東京の坂だらけの町で文豪に纏わるちょっと不思議な時間を描いた物語。細かく理解しようとせず、流れるままにゆるっとストーリーを味う作品かな。坂の中にある町、小日向に住む祖母の親友の家に居候することになった大学生の坂中真智。彼女の不思議な体験時間は果たしてリアルだったのか…黄昏どきの坂ならあちらとこちらが交わる淡いの時間もあってもおかしくないけれど、白昼も有りかもね。鞄のおじさんも面白かったな。「こころ」のような恋模様といい、終始ふわっと、はっきり掴めないような読み心地がとても好き。2025/05/05
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