出版社内容情報
大王朝が沈みゆく時、人々は美とエロスと死の気配に溺れた――。
クリムト、シーレ、ヴィンターハルターら42点の名画と“ウィーン激動の時代”がスリリングに交錯する絵画エッセイ!
絵画はすべてオールカラー、高品質印刷ですみずみまで美しく。
“本書は、時代の必然のように登場した画家とその地の世相や事件を、できる限り多面的に捉えようとする試みです”(あとがきより)
15の章で「名画」と「歴史」と「人間」を読み解く。
内容説明
大王朝が沈みゆく時、人々は美とエロスと死の気配に溺れた。クリムト、シーレ、ヴィンターハルターらの42点の名画と“ウィーン激動の時代”がスリリングに交錯する絵画エッセイ。オールカラー掲載。
目次
延命成功
ウィーン大改造
マカルトとクリムト
エリザベート美貌最盛期
エロス
カフェ文化
女性騎手とデザイナー
音楽と市民の娯楽
死の連続性
ユダヤ人
一九〇〇年パリ万博
問題児シーレ
恋愛と結婚
怒涛の時代
終焉
著者等紹介
中野京子[ナカノキョウコ]
北海道生まれ。作家、ドイツ文学者。2017年「怖い絵展」特別監修者。西洋の歴史や芸術に関する広範な知識をもとに、絵画エッセイや歴史解説書を多数発表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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trazom
125
中野さんは芸術とその時代背景との関係を見事に紡ぐ。歴史や芸術を、その担い手となる人物の生き様を通じてドラマティックに描く。クリムトの出発点が、マカルトの後継者と目された保守的アカデミズムにあったことを知る。ホドラーやシーレとの関係もよくわかる。一方、ハプスブルクの黄昏の物語も悲しい。弟がメキシコで銃殺刑、ルドルフの情死、エリザベートの暗殺、サラエボ事件などに見舞われながら、黙々と政務に勤しむフランツ・ヨーゼフ1世の姿が時代の寂しさを象徴している。「ウィーン世紀末」という独特の時代の妖しさが満喫できる一冊。2024/08/28
アキ
103
クリムトの絵画はハプスブルグ家の終焉に向かう時代とリンクしていた。クリムトも尊敬していたハンス・マカルトの代役として、ウィーン大学の医学がテーマの天井画の下絵を拒否され、アカデミズムとは離れ1897年ウィーン分離派を結成するのは自然な流れだった。世紀末ウィーンでエロスの象徴「ダナエ」を描き、リング沿いに建造物が次々と建ちベートーヴェン・フリーズを描いた。パトロンにユダヤ人が多く現在ニューヨークのノイエ・ギャラリーにある「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ」を描いた。彼の死まで流れが時代と共によくわかる。2024/06/22
keroppi
72
19世紀末ハプスブルク家の終焉と、その時代に活躍した画家たちを作品を通しながら解説する。見開きで紹介される絵画は、魅力的だ。焼失してしまったというクリムトの「ピアノを弾くシューベルト」も見れたのは嬉しいが、この作品実物を見れないという悲しみも感じる。クリムト以外にも、エゴン・シーレ等この時代の空気を描いた画家たちを取り上げているが、フランツ・フォン・バイロスという画家を知れたのは収穫。エロスに満ちたこの画家の作品をもっと見てみたい。2024/10/22
読特
62
超新星爆発。星は寿命を終える直前に最もエキサイティングなイベントを起こす。第一次大戦後に消滅したハプスブルク家。19世紀末のウィーンは、黄昏時の美しさに輝いていた。…次々と後継者を亡くし在位が68年に及んだフランツ・ヨーゼフ。嫁ぐはずの姉に付いてきて自らが皇后になっってしまったエリザベート。ウィーン大学の天井画で物議を醸したクリムト。過激な表現で24日間拘留されたシーレ。カフェのコーヒーは包囲したトルコの置き土産。華やかさは運命の儚さを彩るためにあるのか。…カラーの単行本。絵が見開きでも十分見やすい。2024/07/06
Nat
52
買おうかどうか迷っていたけど、買って正解だった。夏にウィーンに行くので、この本も参考にしてクリムトの絵を見に行きたい。エゴン・シーレも!2024/06/19