出版社内容情報
なぜ、人と人は争わねばならないのか?
日本史上最大の危機である元寇に、没落御家人が御家復興のために立つ。
かつては源頼朝から「源、北条に次ぐ」と言われた伊予の名門・河野家。しかし、一族の内紛により、いまは見る影もなく没落していた。
現在の当主・河野通有も一族の惣領の地位を巡り、伯父と争うことを余儀なくされていた。
しかしそんな折、海の向こうから元が侵攻してくるという知らせがもたらされる。いまは一族で骨肉の争いに明け暮れている場合ではない。通有は、ばらばらになった河野家をまとめあげ、元を迎え撃つべく九州に向かうが……
アジア大陸最強の帝国の侵略を退けた立役者・河野通有が対峙する一族相克の葛藤と活躍を描く歴史大河小説。
内容説明
伊予・河野家は、一族の内紛により没落していた。かつての名門御家人が、元寇を退ける立役者となるまでを熱く描く歴史大河小説。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
361
元寇の役のお話。今村流の胸熱展開にするためかフィクション多め?特に繁と令那を登場させた意味が興味深い。これまでの作品では、敵方の視点にも頁を割くことで情感を高めるのが得意パターンであったので、戦相手の元をどのように描写するかが意外に難しかったはず。ある意味、苦肉の策として河野家中に国外の民を入れ込んだのかなと勝手に読み解いた。ただ賛否はありそうで、元軍を個々の顔が見える”人間”として描くまでは至らず、物足りなさを感じる読者もいるかもしれない。個人的にはじゅうぶん楽しめたし、意欲作だったと思っている。2024/06/02
starbro
226
今村 翔吾は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。元寇は知っていますが、元寇がメインテーマの小説は、初読です。元を迎撃した立役者、伊予の名門ながら没落していた河野通有六郎のV字回復の歴史大河物語、清々しく読み応えがありました。鎌倉時代に、白人金髪碧眼のウクライナの貴族の娘は、滅茶苦茶目立つでしょうね。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639184572024/06/18
パトラッシュ
164
末端の鎌倉武士は国全体など考えず、家の栄光と領地拡大に狂奔した。特に承久の変で没落した河野家では、一族内の分裂と自分たちの優位を図る陰謀が相次ぎ滅亡の淵にあった。数々の悲劇をくぐり抜け大国の犠牲となった令那と繁に感化された河野通有には、国難である元寇も自分が経験してきた無駄な殺し合いの拡大版にしか思えなかったのだ。だからこそ弘安の役で手柄を立てながら、休戦を呼びかけたり敵兵を殺さず救うなど武士らしからぬ行動をとり続けた。知識人としての武士が最前線で戦うという、カタルシスに乏しい複雑な戦争ドラマを描き出す。2024/06/17
いつでも母さん
162
約450頁、大作なんだ。随所に今村節が活き活きとして、確かに読み応えはあるんだ。だけど今までのように身体中から溢れ出る感じというか、震えるような熱い感情は今一つだったかな(当方比)多分・・私の読解力不足なのだろう(汗)【元寇】歴史で習ったはずだけど大きな台風(神風?)のおかげで助かった日本(←合ってますか?)そのレベルの私だもの、海若・河野六郎通有の事など初めて知った次第。令那の存在は今のウクライナ情勢を想像して重い。とは言え、章を重ねるごとに、その先をと読ませるのは流石な感じで、心を擽るのが巧すぎる。 2024/06/17
hiace9000
155
今村歴史哲学・今村ヒューマニズムの金字塔、ここに! 元寇という未曾有の大国難を前にして、「人はなぜ争い、なぜ奪い合うのかー」その本源的問いに向き合い、信念を貫いた御家人・河野六郎通有。人と人は繋がれることを信じ、異質なるものの理解と寛容を身を挺し示す彼の強き生き様に触れ、正に"意気に感ず"の心境に。個に生きたくとも衆に呑まれ、慈しみ差し出すのと同じ手で人を憎しみ傷つける…人間の矛盾は、もはや業か。戦争の愚かしさを痛感し平和の希求が渦巻く現在。戦争が世界を覆う今こそ、多くの人に読んでもらいたい傑作である。2024/06/20