出版社内容情報
嘘だけど嘘じゃない、作家デビューの舞台裏!
「おいしいごはんが食べられますように」で芥川賞を受賞した高瀬隼子さんが挑む新たなテーマはなんと「作家デビュー」。
ゲームセンターで働く長井朝陽の日常は、「早見有日」のペンネームで書いた小説が文学賞を受賞し出版されてから軋みはじめる。兼業作家であることが職場にバレて周囲の朝陽への接し方が微妙に変化し、それとともに執筆中の小説と現実の境界があいまいになっていき……職場や友人関係における繊細な心の動きを描く筆致がさえわたるサスペンスフルな表題作に、早見有日が芥川賞を受賞してからの顛末を描く「明日、ここは静か」を併録。
【著者略歴】
高瀬隼子(たかせ・じゅんこ)
1988年愛媛県生まれ。東京都在住。立命館大学文学部卒業。2019年「犬のかたちをしているもの」で第43回すばる文学賞を受賞しデビュー。2022年「おいしいごはんが食べられますように」で第167回芥川賞を受賞。著書に『犬のかたちをしているもの』『水たまりで息をする』『おいしいごはんが食べられますように』『いい子のあくび』がある。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
397
芥川賞作家・高瀬隼子さんの第5作ですね。ある会社の正社員として働く傍ら、文学賞に応募した作品が認められて単行本化されたラッキーなヒロインが、続いて書いた2作目が何と芥川賞を受賞してしまう。本書はヒロインの経歴を除けば作者ご自身の心境を書かれている様にも受け取れますね、人間というのは周囲からおだてられもてはやされるとどうしても本来の自分のままではいられなくなり悪い方に変質してしまうものなのだろうかと考えてしまいますね。普通の平凡な言動では読者に飽きられると恐れるあまりに過剰なサービス精神に駆られるヒロイン。2023/10/17
ヴェネツィア
366
高瀬隼子の5作目の単行本。彼女は3冊目に上梓した『おいしいごはんがたべられますように』で芥川賞を受賞しているが、本作では、そこに至るまであたりの作家的事情を題材に小説を仮構している。PAL(ゲームセンター)で勤務する(それもまたフィクションのようだ)長井朝陽。そして、小説家の早見有日。実態としての自分と、小説家としての自分がいて(もちろん、これも紛れもない実態である)、相手の人た ちの見る「私」はどんな様相を呈しているのだろうか。そこに戸惑いはあるようだが、煩悶はなさそうだ。それらを「書く」高瀬隼子が⇒2025/09/30
starbro
302
高瀬 隼子、4作目です。半分私小説的な芥川賞受賞後反響小説、著者版『うっせぇわ (Usseewa)』 といった感じでした。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639176102023/11/03
fwhd8325
166
やはり、作家という職業はすごいと感じさせてくれる。等身大の高瀬さんであろうとなかろうと、この物語は面白い。そこに作家としての高瀬さんと作家でいないときの高瀬さんがいるんだと、強烈に印象付けられる。2024/04/27
とろとろ
165
読み始めは、著者の頭の中の事柄と現実世界で著者が話した言葉が分けて書いてあると思っていたけれど、いつの間にか現実と頭の中の世界がごちゃ混ぜになって、どこまでが頭の中の話なのか現実なのか、もう何だかわけわからんようになった。読んでいる自分の頭の中もこんがらがって、「どうせ話すことは逆だろう」とか「思っていてもしゃべらないで話を合わせるだけなんだろう」とか、だんだん第三者目線で、どんどん冷めた気分になって読み終えた。とにかく、これは芥川賞作家らしい話だなと。感想はそれだけしか浮かんでこなかったm(_ _)m。2024/03/12