出版社内容情報
「本を読むたび背骨は曲がり肺を潰し喉に孔を穿ち歩いては頭をぶつけ、私の身体は生きるために壊れてきた。」
圧倒的迫力&ユーモアで選考会に衝撃を与えた、第128回文學界新人賞受賞作。
打たれ、刻まれ、いつまでも自分の中から消えない言葉たちでした。この小説が本になって存在する世界に行きたい、と強く望みました。
--村田沙耶香
小説に込められた強大な熱量にねじ伏せられたかのようで、
読後しばらく生きた心地がしなかった。
--金原ひとみ
文字に刻まれた肉体を通して、
書くという行為への怨嗟と快楽、
その特権性と欺瞞が鮮明に浮かび上がる。
--青山七恵
井沢釈華の背骨は、右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。
両親が遺したグループホームの十畳の自室から釈華は、あらゆる言葉を送りだす--。
内容説明
重度障害者の井沢釈華は、十畳の自室からあらゆる言葉を送り出す。圧倒的圧力&ユーモアで選考会に衝撃を与えた文学界新人賞受賞作。第169回芥川賞受賞。
著者等紹介
市川沙央[イチカワサオウ]
1979年生まれ。早稲田大学人間科学部eスクール人間環境科学科卒業。筋疾患先天性ミオパチーによる症候性側彎症および人工呼吸器使用・電動車椅子当事者。「ハンチバック」で第128回文學界新人賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
881
いろんな意味で話題になった芥川賞作品だが、作品それ自体を越えて、作者と主人公の釈華との相関性において語られることが多かったように思う。小説が一人称体で語られていることも、それを一層に増長したようだ。もちろん、それもまた作者の策術であったという見方もまた可能であるが。小説は、この他にも様々な企みに満ちているし、そのことが常に読者の立ち位置を困難なものにしてもいる。作品が我々に突き付けてくるものは重いが、小説の筆法は全体に軽いともいえる。それは作者の韜晦であり、また裏返しの開き直りなのでもあるのだが。2023/09/15
青乃108号
625
読後。気持ち悪い。ものすごくストレスを感じた。異端の小説。小説だから許されるのだろうがその発言は「言ってはいけない許されない」事だろう。何でこの様な小説が芥川賞なのか。大変な問題作であるし表現としては優れているとは思ったが、さすがにその主張は。あってもいいとは思うが世界の片隅であって欲しい。一躍脚光を浴びて広く一般に読まれるべきものではない。何か日本の社会構造の歪みのようなものを強く感じてしまい俺は絶望した。2023/09/15
ehirano1
604
「普通の人間の女のように子どもを宿して中絶するのが私の夢です」を始めとしたショッキングな数々のフレーズに圧倒されました。これらは毒であり怒りであると感じますが、とても深く考えさせられる「毒」と「怒」でした。2024/04/13
seacalf
597
現代社会に「読書文化のマチズモ」という表現で強烈な右フックを叩き込み、一石を投じるどころか大きな波紋を広げてくれた話題作。hunchback(せむし)と自らを揶揄する主人公目線で世界を再認識することによって、彼女が吐露する問題のみならず、この世にあって日の目を見ないマイノリティの様々な問題にも思いを巡らす。軽視していた訳ではないが気付きの足らない自らの鈍感さに恥じ入る。芥川賞受賞作だが割と文体は軽い。ユーモア混じりの文章が痰が呼吸を阻害し息苦しくなる読書を救う。93ページと驚くほど短いが鮮烈な印象を残す。2024/01/10
bunmei
596
重度の障がいを抱えた筆者の、人として女としての心の叫びが聞こえてくる作品。芥川賞受賞スピーチも衝撃的だったが、本作もド肝を抜く性描写から始まり、医療器具やデジタルのカタカナ用語等、自分も改めて知った言葉が飛び交い、新たな日本語の迫力と豊かさを突きつけてくる。しかし、ここに綴られた言葉や文章は、決して心地よいモノではなく、こうした卑屈な願望には、健常者である自分は理解できないし、個人的には共感はできなかった。逆に、そこまで嫌悪感を抱かせた内容に、筆者のただならぬ凄みと強い叫びを感じた事には、間違いない。 2023/08/07