内容説明
長崎の貿易商・梅屋商店の跡継ぎとして育った庄吉は、香港で写真館を経営する。そこで出会ったのが、清朝を打倒し、西洋の武力支配からの自立を目指す若き孫文だった。西洋列強による東洋の侵略に理不尽を感じていた庄吉は、孫文の情熱を知り、革命を支援することを約束する。庄吉はやがて、日活の前身となるMパテー商会を創立。黎明期の映画事業は大成功を収め、その資金で革命を支援し続ける。実業家・梅屋庄吉の熱き生涯!
著者等紹介
川越宗一[カワゴエソウイチ]
1978年鹿児島県生まれ、大阪府出身。龍谷大学文学部史学科中退。2018年、『天地に燦たり』で第25回松本清張賞を受賞しデビュー。19年刊行の『熱源』で第9回本屋が選ぶ時代小説大賞、第162回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
206
川越 宗一、3作目です。孫文は知っていましたが、中国の独立を目指す孫文を、終生、支え続けた日本人(梅屋庄吉)が存在していたとは、初めて知りました。梅屋庄吉を主人公とした歴史大河小説コスモポリタンの物語、読み応えがありました。英雄はやはり色を好むのでしょうか❓ https://books.bunshun.jp/articles/-/7668?ud_book2022/12/28
とん大西
115
何かを成した、成そうとした…。そんな主人公ばかりが歴史を彩るわけではない。明治維新。彼の若き心に衝撃を与えたのはよちよち歩きの近代国家・日本、そしてアジアの現実。香港で出会った孫文に共鳴。互いに、まだ何者でもなかった。が、彼は生涯にわたり孫文の意志を支えた続けた。梅屋庄吉。なんとも愉快で味のある男がいたもんです。現代とも地続きの激動カオスの時代。名もなきバイプレーヤーが物語の世界で蘇る。流石、光のあて方がうまい川越さんならではです。叶うとも、叶わずとも…。情熱を放ち続けた庄吉の人生を堪能しました。2023/02/24
のぶ
87
孫文という名前だけは知っていた人物の事を十分に知る事ができた。主人公は梅屋庄吉という長崎出身の実業家。庄吉は梅屋商店の主人夫婦の養子となるが、米商売で失敗し上海へ逃亡。その後、香港での写真館事業、シンガポールそして帰国後の日本にて映画館事業で成功し、多大の財産を築く。中国で若き孫文と出会い、清朝を打倒し西洋の武力支配からの自立を目指す考えに共感し、革命を支援することを約束する。史実に基づく物語だったが、そこに描かれる友情の物語は読み応えがあった。「熱源」には及ばないものの、内容は熱いものがあった。2023/01/28
ゆみねこ
76
西洋による東洋への侵略に理不尽を感じた若き梅屋庄吉は、清朝を倒し西洋の武力支配からの独立を目指す孫文と出会い、革命を支援することを約束する。庄吉は商才があり金をどんどん稼ぐが、孫文の革命のための武器を購入する資金として注ぎ込んでゆく。孫文という人物に惚れ込み、生涯支援を続けた。中国の近代史は複雑で中々理解し難いし、この本で読む孫文にあまり魅力を感じられなくて残念。2023/02/18
ヒデミン@もも
55
孫文をこんなにも支援した日本の実業家がいたとは知らなかった。庄吉よりも取り巻く女性たちがすごい。孫文と蒋介石の妻となった宋三姉妹も魅力的。柳原白蓮まで登場するし、意外と世間が狭かったのか?と勘違いしそうなほど濃い人脈。日本は東洋の国一つであることを忘れてはいけないと思う。2023/01/28