出版社内容情報
明治期の日本でコレラ等と戦った北里と鴎外。「感染症学」を通じて、国民の命を守ることに奔走した二人は、なぜ道を違えたのか。
内容説明
ドイツ留学を経て、ペスト菌を発見し、“日本の細菌学の父”の異名を持つ北里柴三郎。一方の森〓外は、同時期にドイツで学び、帰国後、陸軍で最高位である軍医総監にまで上り詰めた。感染症から国民の命を守るという同じ目標を持ちながら、別のアプローチで立ち向かった二人が、最後に見たものとは。感染症との終わりなき闘いに挑んだ二人の医師の「栄光」と「蹉跌」。
目次
妖怪石黒、大いに騙る―昭和六年(一九三一)六月十三日
第1部 青春―明治五年(一八七二)~明治十八年(一八八五)
第2部 朱夏―明治十九年(一八八六)~明治二五年(一八九二)
第3部 白秋―明治二五年(一八九二)~明治三八年(一九〇五)
第4部 玄冬―明治四一年(一九〇八)~大正十一年(一九二二)
妖怪石黒、最後に嗤う―昭和十六年(一九四一)四月某日
著者等紹介
海堂尊[カイドウタケル]
1961年、千葉県生まれ。医師、作家。2006年、『チーム・バチスタの栄光』で、第4回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞、作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
237
3月の第一作は、海堂 尊の最新作、海堂 尊は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。北里柴三郎と森鴎外、名前は知っていますが、二人の物語を読むのは初めてでした。ライバル関係にあった二人ですが、正反対の性格、北里柴三郎(太陽)VS森鴎外(月)だったようです。しかし留学先のベルリン、森鴎外は有名ですが、二人でWデート&W舞姫でした(笑)二人が現代に生きていたら新型コロナウィルスにどう立ち向かったでしょうか? https://books.bunshun.jp/articles/-/6989?ud_book2022/03/01
KAZOO
129
海堂さんによるドキュメンタリーフィクションです。かなり資料を渉猟して調べてある程度は事実ですが、北里や森鴎外の心の中はフィクションなのでしょう。森鴎外は私は文学者としては可なりなものだと思いますが、サラリーマンとしての人物としては出世欲にまみれた人物であったのでしょう。作者はやはり北里の方に重点を置いて書かれているような気がしました。それでも同時代に生きたこの人物をよく物語に仕立て上げたという気がします。2022/09/16
trazom
120
明治の衛生学における、内務省衛生局、陸軍軍医部、帝大医学部の三つ巴の権力闘争が生き生きと描かれ、手に汗握る面白さ。後藤新平・北里柴三郎の豪放磊落さに対し、一人称の「ぼく」で語られる鴎外のウジウジとした性格がよく表れている。「脚気米食説に反発し、統計を誤魔化して誤った対応に固執した陸軍軍医部は、その後、関東軍の防疫給水部(七三一部隊)で生物兵器開発・人体実験へ。コロナに関し、衛生学の基本を蔑ろにして医学統計を発表せず、科学的根拠に基づかない対応を続けている政府や厚生労働省の姿に重なる」というあとがきが重い。2022/05/24
やいっち
100
1922年(大正11年)7月9日に鴎外は亡くなったので、今年は没後百年。関連の本は各種出ているが、読みやすそうなので、本書を手にした。 実際、伝記ではなく、小説仕立て。でも、小説でもない。なので、登場する人物らの喋りは、作り事と受け止める。事実関係だけを追うように心がけた。2022/07/14
がらくたどん
82
<『森志げ全作品集』刊行を勝手に記念:番外>久々の海堂さん。医者の嫉妬と切磋琢磨を書かせたらやっぱりピカ一だ。同期の水と油の反発・共振譚だけど『ひかりの剣』みたいにはいかない。そりゃそうか、悪名高き脚気論争は陸軍兵士ウン万人の命を捨て駒にした泥仕合なので。北里パートはいかにも伝記の三人称なのに森のパートだけが一人称なのが面白い。森の述懐は信念・誠意・諦念・後悔すべて自分で自分を騙し宥める方便であり、学問への好奇心や文学的繊細さを持つ青年が組織の力学にいかに「賢く」適応し自分を正当化していくかを見るようだ→2022/08/22