出版社内容情報
頼朝亡き後も政子は武士の府を守るため、弟の義時とともに政敵を排除する謀略を次々と仕掛け、修羅の道を進む。圧巻の歴史巨編。
内容説明
頼朝亡き後、弟・義時とともに次々と政敵を滅ぼしていく北条政子。鬼となって幕府を守り抜いた“尼将軍”を描く圧巻の歴史巨編。
著者等紹介
伊東潤[イトウジュン]
1960年、神奈川県横浜市生まれ。2007年、『武田家滅亡』(KADOKAWA)でデビュー。『国を蹴った男』(講談社)で「第34回吉川英治文学新人賞」を、『巨鯨の海』(光文社)で「第4回山田風太郎賞」と「第1回高校生直木賞」を、『峠越え』(講談社)で「第20回中山義秀文学賞」を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
270
前作『修羅の都』よりも面白かった。まさに夜叉と形容するのがピッタリな北条政子が堪能出来る。言い訳のしようがない鬼畜の所業だらけのはずが、さらに腹黒い義時を配し、どこか優柔不断な人物として政子を描いたことが良い方向に作用して、ヒロインとして成立した。承久の乱に向けての流れなでどは、なかなかに胸熱。武士の府を守るためという大義のもと、文章で読むだけでは朝令暮改としか思えない変遷を辿り、それらのほぼすべてが子殺し・孫殺しに繋がってゆくのがただただ凄惨。それがあることで、他の権力闘争物と差別化出来ているのかも。2023/03/08
starbro
229
伊東 潤は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。北条政子は、来年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人』の小池栄子ではなく、『草燃える』の岩下志麻のイメージ(夜叉にぴったり)で読みました。北条氏の体の良い権力争奪のような気もしますが、本書の内容が史実に近いとすると、夜叉にまでなった北条政子は、武士の棟梁の鏡、鎌倉幕府の礎です。 私は、『鎌倉殿の13人』を観ることを予定しています。 https://books.bunshun.jp/articles/-/6737?ud_book2021/12/08
ちょろこ
134
ダークな一冊。頼朝亡き後の政子が夜叉と化した。この表紙がまさに政子の心そのもの、ダークな鎌倉府の血みどろ歴史絵巻。頼朝と誓った武士の府を守るため、今度は義時とのタッグ。が、やっぱり道は険しい。次から次へと迫る致し方ない決断。幾度、政子は血の涙を流したことか。全ては武士の府のため…と、誰もがうまい言い訳にして自分を守り都合の良い方へと動き動かしていた気がした。特に義時はダントツのダーク武士。やっぱりこういう人なの⁇このラストは意外で息を呑む。政子はようやく母になれたのかな…思うほどせつなさもまた増す。2022/07/20
とん大西
130
全ては鎌倉を守る為。夜叉となり、夜叉を貫いた尼将軍。北条政子の王道といえば「草燃える」の原作で永井路子さんの「北条政子」と「炎環」。その骨太な業が名作中の名作。本作は主人公政子より執権・義時に焦点があたっていたように思います。大河ファンとしては嬉しい限りですが。…それにしても、彼らの謀略の凄まじさよ。源氏も北条も骨肉相はむ鎌倉の府。比企や梶原の討伐も、頼家更迭、時政追放も…やむにやまれず謀りに謀る。愛憎の愛さえ朧となる。頼朝逝去後の鎌倉殿の13人。常時傍らに座していたのはお袋様政子。…やはり、業の人です。2021/12/17
パトラッシュ
126
夫の頼朝が築いた東国武士の政権を受け継ぐ力量が息子にないと悟った時、政子の絶望はいかばかりだったか。そのため有力御家人による合議制で武士の府を支えようとしたのに、権力欲に狂った武士たちは権謀術数と殺し合いに明け暮れた。血を分けた息子や孫や甥までも次々と権力抗争の犠牲となり、遂には治天の君たる後鳥羽院攻撃の先頭に立つ。そこまでして必死で戦ったきた果てに、自分に夜叉になれと求め続けた弟も権力の私物化を図るのを知った政子は本物の夜叉と化す。女であることを捨てる覚悟を定めた政子の怖さが炸裂する終局は思わず震える。2021/12/17