出版社内容情報
先人たちの葛藤や情念にあふれ、今も脈打っている。セカイや人生のあらゆる一瞬を哲学的にひもとく、縦横無尽の思索の書。
内容説明
ラッシュアワーの満員電車にはスピノザが現れ、強いタバコの香りとガムラン音楽の思い出は荻生徂徠の声を呼ぶ。世間論は『カラマーゾフの兄弟』の土の香りと交じり合い、『エヴァンゲリオン』はグノーシス主義の末裔としての資質を覗かせる。時代や地域、学問領域を超えて、あらゆる瞬間は哲学的にひもとかれていく。
目次
第1章 哲学は答えを与えてくれない(東京で溺れない哲学;赤いスピノザ、白いスピノザ;降り積もる雪の中で;人生が二度あれば;こじらせたあなたに)
第2章 世界と“私”の間にあるもの(夜と闇の中の倫理学;セカイ系倫理学を求めて;大地に向かう倫理;閾の上にとどまりながら;宇宙に響く音楽)
第3章 見えない未来を迎え入れるために(異常気象と嵐の中で;人生は物語としてある;過去の中に存在する未来;現実という瓦礫の上で;過去と未来を渡す橋;自分への約束、未来への約束)
終章 セカイの終わりと倫理の始まり
ブックガイド
あとがき
著者等紹介
山内志朗[ヤマウチシロウ]
1957年、山形県生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。新潟大学人文学部教授を経て、慶應義塾大学文学部教授。専門は中世哲学、倫理学。その他、現代思想、修験道など幅広く研究・執筆活動を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
20
『エヴァ』や『天気の子』に言及しつつ、しかし著者の手付きはそんなポップカルチャーの軽やかさとは裏腹に、どこかドン臭い。私の理解が及ばなかったところもあるので誤読を開陳することになるが、著者はスピノザや西田幾多郎を紹介しつつ「わからないまま考える」哲学の作法をそのまま「実践」したのではないだろうか。私たちがこの本から学ぶべきは従ってわかりやすい哲学の絵解きではなく、「著者に倣って」それぞれの考えを深めていくことなのだと思う。ただ、人生訓というかこの不可解な「セカイ」をどう生きるかという問題提起はアクチュアル2021/12/01
K.H.
7
哲学的エッセイ集。哲学ではスピノザとスコラ哲学とベンヤミンなんかが扱われ、途中から軸になるのがエヴァンゲリオンと新海誠のセカイ系。読み始めたときには、アニメの話になるとは予想していなかった。で、セカイ系に対する著者の態度はどうも煮え切らないと言うか愛憎半ばすると言うか、未決のまま。ドゥンス・スコトゥスから「天気の子」につながる回路はすごすぎる。その他の点でも論旨(というものを期待するのはこちらの悪い癖なのだろう)はあっち行ったりこっち行ったり。なるほど、これがわからないまま考えるということか。2022/03/29
ぎじぇるも
4
哲学者山内志朗による哲学的省察に溢れたエッセイ集で、自身の出生地やこの世界たとえば土や風土についての考察。天気の子やエヴァなどセカイ系アニメへの批評をまぜた考察とそれを人生論に絡めたりなど刺激的な本だった。正直難しいのだが、終章がおもしろかった。「自分の夢を実現する事で、死を手に掴むのだ。ある特定の事柄が人生の夢として機能するのは実現していない限りのうちだけであって、実現した途端ガラクタになってしまう。ーー人生は夢だらけでなければならない。ー固定的に存在しない限りにおいて夢や目的は存在する。」から始まる、2023/09/03
Go Extreme
2
安易な答えを求めない 哲学的な思考 曖昧さや不確実性を許容する 内在原因 実体と様態 セカイ系倫理学 個人と世界が直結する構造 中間的な共同体の世界 土の両義性 汚れと豊穣の源 カラマーゾフ的なもの 世界に無駄なものは何一つない 闇を見る視力 闇に満ちた倫理学 言葉で伝わらないことを伝える力 音楽と礼楽 ライプニッツの予定調和 宇宙の秩序と音楽的な調和 異常気象の倫理的意味 トレードオフと犠牲 等価交換が成立しない世界 過去と未来の絆 生と死の間の媒介領域 秘密や内面性2025/04/15
takao
2
善の研究 音読すべし エチカ スピノザ 岩波文庫 まったく理解できない。 意味の倫理学 Doルーズ 河で文庫 理解できない事柄の連続 2022/12/29