出版社内容情報
今ほど心が蔑ろにされている時代はない。それはなぜかを解き明かし、心の在り処を探る。心を取り戻すための小さな物語が詰まった一冊
内容説明
命がけの社交、過酷な働き方、綺麗すぎる部屋、自撮り写真、段ボール国家、仮病…すぐにかき消されてしまう心を探して。『居るのはつらいよ』の筆者が贈る“心が閉じ込められた時代”の道しるべ。
目次
春(バジーさんが転んだ;メールで卓球 ほか)
夏(補欠の品格;補欠の人格 ほか)
秋(午前4時の言葉たち;雑談賛歌 ほか)
冬(中学受験の神様;ハルマゲドンの後で ほか)
また、春(孤独の形;段ボール国家 ほか)
著者等紹介
東畑開人[トウハタカイト]
臨床心理士・公認心理師。博士(教育学)。1983年生まれ。2010年京都大学大学院教育学研究科博士課程修了。精神科クリニックでの勤務を経て、14年より十文字学園女子大学に勤務、現在准教授。17年に白金高輪カウンセリングルームを開業。著書『居るのはつらいよ』(医学書院)で第19回大佛次郎論壇賞、紀伊國屋じんぶん大賞2020大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
本詠み人
106
随所にパロディ感を漂わせた面白系のエッセイか?と思いきや…その通りでした笑(ヾノ・∀・`)ウソウソ!ちゃんと真面目なカウンセラーさんでエッセイスト。めちゃファンになりました。相手の〝こころ〟をちゃんと捉えていなければ、いやその前に、人に対して肯定的で興味をもてなければ臨床心理士にはなれないのか?と思えるほど、するりと懐にはいれる方。他の著書も読んでみます✨📚2022/05/11
ネギっ子gen
86
週刊文春連載「心はつらいよ」をまとめた本書には、「ちょっと長めの序文」がつく。著者はこう書く。<春にはコロナがあった。だから、「コロナ禍の心」を書こうと思った。だけど、すぐにネタが尽きたから、夏にはなんでもいいから心を探すようになった。それでも心は見つからない。観念した私は、次第に「心はどこへ消えた?」と問うように/冬の訪れと共に、わかってきたのは、大きすぎる物語によって、心がかき消されてしまっていることだった。そしてそれが、決してコロナのせいではなく、この20年一貫して進行してきたことに気がついた>と。2021/12/02
pohcho
69
臨床心理士のエッセイ。以前から気になっていた東畑さん初読み。コロナ禍という大きすぎる物語に取り込まれ、個々人の持つ小さな物語が吹き飛ばされてしまった今。正論を叫ぶ大きな声にかき消され、個別の事情が数値化されて見えなくなった今こそ、小さな物語に耳を傾けることが必要なんだ、という序文にとても共感する。エッセイ自体は週刊文春連載のものなので、軽やかでユーモアがあり楽しかった。カウンセリングでのいろんなエピソードが紹介されており、とても興味深く読んだ。2022/03/08
shikashika555
69
自分の心を他者に向けて語るなんて、相当ハードルが高いと感じている。とくにそれが生々しい傷であれば尚更。 ひとは、編集済みのことしか語りたがらない。 軽妙な語り口でたのしい連載ではあったが、生々しい痛みの残る傷を語る場とカウンセリングを提供する仕事とは、時にかなり辛いことではないだろうか。 しかしこういう心理学者の読み物や社会学者の聞き取りなどが好まれるのは、みんな自分の中にある物語を呼び起こしたいからかなあ。 多分私もそうなんだろう。2021/10/05
たかこ
54
心はどこへいった?そもそも心はどこにあるのか?心は体温計みたいに数値にするのが難しい(尺度で数値化することは可能だれど…)。本の中に登場するクライアントさんは、心を見失っている。でも、ちゃんとクリニックで相談できて立派だな、と感じる。コロナ禍で人と人との距離ができつながることが難しくなったし、社会のいろいろなことが変化した。ストレスを感じたら、自分自身の中にある治療者を大事にしよう。疲れたら休む、好きなことをする、小さくても複数の小さな癒しを持つと強い。そして、勇気を出して人に頼ろう。2022/01/24