出版社内容情報
旗本の次男坊で部屋住みの俺は、兄が好意を寄せている下女にちょっかいを出そうとするが、その前に彼女は身籠る。はたして父親は誰?
内容説明
粋がる旗本次男坊が、女で祖父に負けた時―俺は江戸者だ。意気地と張りだ。江戸に生きる人々が織りなす鮮やかな人生。青山流時代小説の真骨頂!珠玉の短編集。
著者等紹介
青山文平[アオヤマブンペイ]
1948年、神奈川県生まれ。早稲田大学第一政治経済学部卒。経済関係の出版社勤務、フリーライターを経て、2011年『白樫の樹の下で』で松本清張賞を受賞。15年、『鬼はもとより』で大藪春彦賞、16年、『つまをめとらば』で直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
213
青山 文平は、新作中心に読んでいる作家です。本書は、江戸に生きる人々が織りなす時代小説短編集でした。オススメは、『つぎつぎ小袖』&『いたずら書き』&『台』です。2020/12/01
タイ子
91
7つの短編集。どれも面白かったと言いたいが中にはちょっと私の読解力では追いつかない作品も。しかし、青山さんの書く女性心理はお見事と言いたい。「つぎつぎ小袖」に於いては自分の器量の悪さが似てしまった娘への想い。夫へのプレゼントを恋文と表す妻の心。どちらも愛おしい女心を描いえいる。表題の「江戸染まぬ」は先に「底惚れ」を読んでいたので、短編を読むと丁度いい所で終ってたんだなって改めて感じる。そこから「底惚れ」の長編に持って行った青山さんの技量はさすがです。「台」のオチは思わず笑える。女はくせ者、男は道化役者。2022/03/10
がらくたどん
75
「江戸染まぬ」が『底惚れ』に「町になかったもの」が『本売る日々』と後の長編へ。栴檀は枝葉を伸ばす前の双葉が既に芳しい♪武家の窮屈・家計の不如意ばかりが目立ち始めた近世末期を舞台にした短編集。家の体裁より家族への自身の想いを優先して心を澄ます妻女。独学の楽しさから書肆を開く夢を持つ商人。厄介叔父としての矜持を唯一習い覚えた「剣」に賭ける老剣士二人。江戸に染まらぬ女の真意に心動かす江戸に染まりすぎた半端者。勤勉一筋にみえた祖父の深みを知った遊び人の厄介叔父。旧来の存在意義が揺らぐ時代の精一杯が今を映して爽快♪2023/05/22
kei302
72
短編集。文平先生、書きっぷりがじょじょに柔らかくなっている。よい傾向です(上から目線)。 『町になかったもの』が明るい感じで面白かった。 厄介叔父や部屋住みの辛さが沁みたし、最後の『台』の祖父が祖母の介助する姿に胸を打たれた。 他の時代小説作家さんとは違った切り口で楽しませてくれる青山氏の作品は良いです。2021/04/08
真理そら
65
表題作は江戸だが他の6編も現在地に染まぬ人の思いを掬い取ったようなお話。「町になかったもの」は前向きな話だが、できて初めてそれが町になかったことに気づくという状況が寓話的に感じられて印象的だった。2021/09/19