出版社内容情報
母を喪くし高見澤家で暮らすことになったひとりの少年に三姉妹は心を奪われていく。プリズムのように輝き、胸を焼く記憶の欠片たち。
内容説明
初恋、それは身も心も砕くもの。母を亡くし、高見澤家で暮らすことになった少年に、三姉妹はそれぞれに心を奪われていく。プリズムのように輝き、胸を焼く記憶の欠片たち。現代最高の女性作家が紡ぎだす、芳醇な恋愛小説。
著者等紹介
山田詠美[ヤマダエイミ]
1959年東京都生まれ。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞を受賞し鮮烈にデビュー。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞と、文学賞を次々と受賞。その後も現代文学の旗手として旺盛な執筆活動を続け、2001年には『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」(『珠玉の短編』所収)で川端康成文学賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
369
山田詠美がいとも鮮やかに描いてみせる現代版『細雪』の物語。四姉妹ではないのだが、三姉妹+母親で実質的にはこれで数が揃う。幾分ステレオタイプの傾向がなきにしもあらずだが、全3部をそれぞれの姉妹を視点人物に描いてゆく。ある日、突然この家にやって来た男の子、新堂力(リキ)。彼の存在が、それまでは平穏だった女たちの園に大きな波紋を呼び起こす。すなわち、彼が起爆剤となって、それぞれの女たちを浮かび上がらせるという構造をとっている。時に、力は11歳、長女の麗子12歳、次女の咲也10歳、三女の薫子6歳であった。⇒2025/03/01
sayuri
125
初恋の事をファーストクラッシュとは言い得て妙。初恋は実らないと言うから、それを思えば粉々をイメージするクラッシュとぴったりマッチする。インパクトのある装丁、一筋縄では行かないだろうと覚悟と期待を持ちつつ読みだすと良い意味での軽やかさを感じる。裕福な高見澤家で暮らす事になった少年・力(リキ)とその少年に心を奪われる三姉妹のエピソードが三部構成で綴られているが二部の麗子の章では何度も笑いをかみ殺した。初恋は幼いゆえに真剣で時に滑稽で純粋さを持っている。リキに翻弄される女性達を描いたちょっとひねくれた恋愛小説。2019/11/21
モルク
124
高見澤家のお嬢様である三姉妹がそれぞれに語っていく三章から構成されている。ある日突然父が愛人の遺児力を連れてくる。突然の同居と力の立場から、母と三姉妹は彼に対してそれぞれに屈折した思いを抱くが、男子が好きな女子に対して行う「ちょっかい」とは異なるもっと破壊したいような複雑な思い。次第に成長し大人になっていく彼らの変化。とりたてて愛をかたちにするようなシーンはないのだが、なぜかそこはかとないエロスを感じる。子どもの頃から彼女らを冷静に見ていた力がどこか怖い。力目線の話も読みたかった。2020/01/12
buchipanda3
106
題名は初恋の意味。crushは「粉砕」の他に「ときめき」って意味もあるらしい。なるほどラブとはまた違った印象。今回読んだのはまさにそのクラッシュの方だと感じた。3姉妹の前に現れた少年は父親の愛人の子。一緒に暮らすこととなった彼女らのファーストクラッシュ。三部作のうち咲也のが好みだった。ひねた感じの彼女はリキに対して大人ぶった訳知りの気持ちでいたぶるとか憐れむとか言うが、彼の見せる意外な反応に翻弄され、その空回りっぷりがいかにもクラッシュな感じ。この話も含めて詩(藤村、中也、寺山)の使われ方が印象的だった。2019/11/11
いこ
91
この物語は「高見澤家のお嬢様」3人が一章ずつ語っていく形式。ある日突然うちの子になった、父の愛人の子リキのことを。小5の次女咲也は言動に目を光らせ文句を言うことで、長女麗子は召使にすることで、三女薫子は犬仲間としてじゃれあうことで、それぞれにリキを愛していた。高見澤家の女たちの歪んだ愛の形。そこで育ったリキの運命は?そして最後にリキを射止めたのは?「ファーストクラッシュ」とは初恋のこと。crushは、粉々に砕いたり、ぺしゃんこな状態にすること。自分の初恋はこんなに歪んでいなかったけど、確かに砕かれたかも。2020/01/04