内容説明
中国の孤児院で育ち、富裕なドイツ人夫婦の養子となった盲目の青年、阿大ことベンヤミン。中国で六歳の少年が木の枝で両目をくり抜かれる凄惨な“男児眼球摘出事件”が発生。ベンヤミンは被害者の少年を力づけ、同時に事件の真相を暴くべく、お目付け役のインターポール捜査員・温幼蝶とともに中華文明発祥の地・黄土高原へと旅立った―。第4回〓瑪蘭(カバラン)島田荘司推理小説賞受賞。
著者等紹介
雷鈞[ライキン]
1980年広東省広州市生まれ。2002年北京大学光華管理学院を卒業後、会社勤務の傍ら小説の創作を始め、2013年『見鬼的愛情(妖異と恋情)』が第3回島田荘司推理小説賞の最終候補となる。2015年には『黄』で第4回〓瑪蘭・島田荘司推理小説賞を受賞
稲村文吾[イナムラブンゴ]
中国語文学翻訳家。早稲田大学政治経済学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
🐾Yoko Omoto🐾
132
中国の孤児院で育った阿大と茉莉が、ドイツの資産家の養子となった幼少期と、中国で起きた凄惨な事件に興味を持ち、その真相を探ろうと奮闘する現在が交互に語られ進行する本作。冒頭の大胆不敵なトリック予告に負けぬ物語そのものの真相には、やられた!の一言だ。ただトリックに纏わるネタの良さに反して、デビュー作ゆえか一人称ゆえか、登場人物の行動原理に掘り下げ不足を感じ、説得力の点で実に惜しいという印象も…。とは言え、この作品の根底に盛り込まれたメッセージ性は、非常に真摯且つ前向きなもので、タイトルと併せて強く心に響いた。2019/09/14
とん大西
123
これは凄い!予想をはるかに超えるどんでん返し。いや、作者の術中に自らハマってたのだからどんでん返しですらなかったのかも。孤児院からドイツの富豪に引き取られ、愛情を受けて成長した阿大ことベンヤミン。先天的に盲目故か、「目が見える」という概念のない彼が類いまれな頭脳と聴覚嗅覚を駆使して難事件に挑む。ヤマは幼児眼球摘出事件、現場は愛する故国中国。違和感と疑惑が交錯する温刑事との現場捜査。そして…違和感のピースが揃った先に見えた真相、そしてその先の真実。驚き以外のナニモノでもなかったょ。丁寧な伏線回収にも満足😃2020/08/16
ケイ
118
隠された叙述トリックをさがせ、見逃すな!とおもいながら読んだが、ヤラレたなあ。しかし、ミステリとして面白いかといえば微妙だ。設定や展開が少々荒唐無稽で、強引なところもある。漱石先生は「智に働けば角が立つ」と言われているが、ここは知をひけらかすように話す人が多くて、読んでいてしんどかった。中国系ミステリはあまり肌に合わないかも。2019/10/31
ちょろこ
115
壮大なミステリ、の一冊。中国の孤児院で育ちドイツ人夫婦の養子となった盲目の青年ベンが中国で起きた凄惨な事件の真相を暴くミステリ。うん、お見事。自分好みだった。見えない分、研ぎ澄まされる聴覚、嗅覚を巧みに盛り込ませながら進むストーリー、そして導かれた終着点。その瞬間はまさに自然と狭められていた視野が開かれた感覚、思わず声がでるほどだ。練り込まれた仕掛けは目を疑う壮大さ。そしてベンがこの先切り拓いていく人生もまた壮大な予感しかない。ラスト、彼が真っ先に望んだものに思わず涙腺がゆるんだ。タイトルも含め秀逸作品。2019/10/10
aquamarine
92
中国の孤児院で育ち、ドイツの富裕層に引き取られた盲目の青年ベン。中国で起きた六歳の少年が両眼をくりぬかれた事件の被害者を力づけようと中国へ渡る今の出来事と、自身の過去が交互に語られます。最初にあるトリックが仕掛けられていると伝えられるのですが、いつしかベンと一緒に暗がりの世界に耳を澄ませ匂いを想像し夢中になってトリックのことなど忘れて読んでいました。ラストまで読むとあれもこれもがすべて伏線だったと気付きます。事件の真相よりこの物語のメインの部分には驚きながらも納得し、気持ちよく読み終えることができました。2019/08/29