出版社内容情報
おおきくなる、つよく逞しく、この夜を越えてゆけ。
自分の、ひとつひとつの輪郭がぼやけて、危機感をもてないまま
今日も一日をやり過ごす。就職して恋愛結婚して、その先に何があるだろう。
地震に金融崩壊。カタストロフに満ちた社会で、丁寧な明日をうまく保てない。
ある日、夜の川のたもとで出会った少年。女友達の幼い子ども。
そして舞い込んできたルームメイト。時を重ねて、夜の時間がほどけてゆく。
黄昏日本の、みずみずしさをたたえた青春物語。
「しずけさ」「愛が嫌い」「生きるからだ」の3作を収録した
新芥川賞作家の飛翔作。
内容説明
日常の中にも、一瞬先のカタストロフ。自我の輪郭があやふやなぼくは、愛と生活を取り戻せるのだろうか。交錯する優しい感情。新しい関係の萌芽を描く、パラレル私小説3部作。芥川賞作家の新境地。
著者等紹介
町屋良平[マチヤリョウヘイ]
1983年東京都生まれ。2016年『青が破れる』(河出書房新社)で第53回文藝賞を受賞。2017年同作が第30回三島由紀夫賞候補となる。2018年『しき』(河出書房新社)が第159回芥川賞候補、第40回野間文芸新人賞候補となる。2019年『1R1分34秒』(新潮社)で第160回芥川賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
168
町屋 良平は、新作中心に読んでいる作家です。今時の若者の連作短編集の佳作、オススメは表題作の『愛が嫌い』です。本書は、図書館の予約も容易で、読メの登録も少ないので、著者は売れない芥川賞作家まっしぐらのような気がします。2019/07/31
ででんでん
95
両親は甘えたいときは甘えさせてくれ、無視されたりいやなことを強要されたりもしない…ただひとつ2時から6時までは家にいてはいけないと言われるいつきくん。学校では人望があり、運動神経にすぐれ、成績も悪くない11歳。でも「いつきくんはいつきくんを止めたかった」。両親の都合で束の間事態は変わるが、また都合で元に戻る。それこそが強要だけれど、その間にもいつきくんの背は伸びていく。河原でいつきくんと夜を共にする「かれ」。そしてどこか似ている「かれ」たちが描かれる計3編。「充足は世間でいうぜつぼうと表裏一体」2020/05/31
tototousenn@超多忙につき、読書冬眠中。
84
『しずけさ』☆5.5 あいかわらずな自由と奔放。故に、テヘヘ、“萌え萌え”てしまう。 『愛が嫌い』☆5.0 これは、中庸。 『生きるからだ』☆4.0 撥ねすぎてて脳が追いつかない。2021/01/30
アマニョッキ
64
町屋さんの新作は「しずけさ」「愛が嫌い」「生きるからだ」の三篇。町屋さんの世界を、五感を、優しさを、わたしは飾られたような綺麗な言葉で語りたくはない。なのでレビューは放棄します。わたしの凡庸な言葉では町屋さんの素晴らしさは語れません。ただひとつ、わたしがドラクエやってるこのタイミングで「しずけさ」の椚くんも「生きるからだ」のかれもドラクエやってたので、やっぱり運命は感じました。わたしは5でかれは6。椚くんのやってたドラクエはどれだろう。たしかにチャモロは毒におかされがち。町屋さん、一生ついていきます。2019/08/29
りつこ
42
わわ、なんだこれは。ちょっと今まで読んだことのない感じ…。「うわっわかるっ」と親し気に腕をつかんだものの、「あっやっぱわかってなかったかも」とそっと離す感じ。人間をフラットに全く別の視点から見ようとしているような…でもそれが奇をてらっていなくて…自分にも覚えがある部分…身につまされるところがたくさんあって、心地よさと居心地の悪さ、両方がある読後感。「しずけさ」「愛が嫌い」「生きるからだ」どれもよかったなぁ。他の作品も読んでみよう。2019/09/06