出版社内容情報
東京から山間の町に引越した中学三年生の歩。うまくやってきたはずだった。あの夏、河へ火を流す日までは。注目の俊英、渾身作!
高橋 弘希[タカハシ ヒロキ]
著・文・その他
内容説明
少年たちは暴力の果てに何を見たのか?東京から山間の町へ引っ越した中学三年生の歩。級友とも、うまくやってきたはずだった。あの夏、河へ火を流す日までは―。第159回芥川賞受賞作。
著者等紹介
高橋弘希[タカハシヒロキ]
2014年、「指の骨」で新潮新人賞を受賞。同作で芥川賞、三島賞候補。17年、『日曜日の人々(サンデー・ピープル)』で野間文芸新人賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
372
8月の第一作は、芥川賞受賞作です。芥川賞発表前に図書館に予約したので、早いタイミングで読めました。高橋 弘希、初読です。今回の芥川賞受賞作・候補作を、現状3作読む予定です。本作は、著者版『少年時代』+『ナイフ』といった感じでした。芥川賞らしい作品ですが、現代が舞台の小説ながら、20世紀の作品のようです。青森の田舎とは言え、流石に花札や角力ではないと思うんですが・・・2018/08/01
ヴェネツィア
324
高橋弘希は初読。本書は第159回芥川賞受賞作。父親の転勤にともなって、東京から青森県平川市(弘前市に隣接)に転校してきた歩を軸に展開する。歩は中学3年生だが、この地(平川よりも更に北)の中学校では3年生は男女合わせて12人という規模の小社会であった。クラス(学年と同意)を仕切る晃と、イジメの対象となっている稔らの中で歩は学校生活を送るのだが、次々に難題に遭遇する。それらを何とか掻い潜っていたのだが、祭の夜、中学校の既卒生らによって、とうとう二進も三進もいかない状況に追い詰められる。彼らによる圧倒的な暴力⇒2024/11/29
こーた
305
都会でずっと暮らしているわたしのような人間にとって、田舎の村落、というものはどこか余所余所しくて、不気味だ。その畏れをともなう不安感が、美しい自然描写に紛れて入りこみ、じわり広がっていく。あまりに読み易すぎてつかみどころがなく、彼岸と此岸をわける境界さえ、あいまいだ。何がいけなかったのか、どこでまちがえたのか。そんな理屈の通用しない危うさが、子どもにはある。幼稚さの裏側に横たわる狂気。これだから子どもは苦手なのだ。さいきん、そんな子どもっぽさが大人の世界にもふえたような気がする。怖ろしいことである。2018/09/01
zero1
282
不条理と因習の狂気。目の前に見えるものしか信じないとしたら、見逃すことが多すぎる。中三の歩は父親の転勤で東京から青森の田舎に転校。三年生は12人で男子6人という小さな世界。そこでは晃が稔を従わせていた。教師の懸念と何も気が付かない両親。限られた世界にこそ、人間の本質がある。人は観客なのか?それとも主体的に目の前の人間関係に介入すべき?少なくとも「観客でいる罪」からは逃れられない。芥川賞には「絶滅危惧種」の純文学を守る意味がある。間違ってはいけない。本書は暴力を肯定していない。あるものを描くのが文学だ。2019/06/28
文庫フリーク@灯れ松明の火
282
『指の骨』が印象に残る高橋弘希さん。けれどこの『送り火』では、何を描きたいのか私には掴めなかった。時代的には2000年~2010年頃になるのだろうか。転勤族の父のため津軽地方の僻地へと転校した中3の歩。私は更に古い時代の田舎者だが、いかに田舎とはいえ血を流し命にかかわるような陰惨な遊びを娯楽とはとても思えない。なぜ浅草は「江川の玉乗り」曲芸師・江川マストンの芸が津軽で陰惨なイジメの娯楽として伝えられるのか?ブチ切れた稔の「わだっきゃ最初っから、おめぇが一番ムガついでだじゃ!」が本気で怖い。2018/12/25