出版社内容情報
無期懲役の判決を受けた殺人犯の家族が殺された。遺族による復讐か、現在の司法に対するテロか……渡瀬刑事が追う。社会派ミステリ。
内容説明
ギリシア神話に登場する、義憤の女神「ネメシス」。重大事件を起こした懲役囚の家族が相次いで殺され、犯行現場には「ネメシス」の血文字が残されていた。その正体は、被害者遺族の代弁者か、享楽殺人者か、あるいは…。『テミスの剣』や『贖罪の奏鳴曲』などの渡瀬警部が、犯人を追う。
著者等紹介
中山七里[ナカヤマシチリ]
1961年生まれ。岐阜県出身。会社員生活のかたわら、2009年、「さよならドビュッシー」で第8回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、翌年デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ウッディ
433
凶悪な犯罪を犯しながら温情判決により死刑を免れた犯人の家族が相次いで殺される事件が起こり、現場には義憤の女神「ネメシス」の血文字が残されていた。司法に挑んだ犯人、そしてその目的とは?とても面白かった。死刑制度の要否など司法の限界について考えさせられるだけでなく、意外な犯人、そして事件が解決してからのどんでん返しも全く予想できず、ミステリとして読み応えも十分でした。何より加害者家族であり、未遂になった3つ目の被害者である菜々子の毅然とした態度と渡瀬警部のやり取りが印象的で、渡瀬警部の他の物語も読んでみたい。2018/06/03
うっちー
423
凄い執念。本題の正解はあるのか❓2017/08/17
しんたろー
335
『テミスの剣』が中山作品の中でも上位に好きなので、渡瀬が主役の第2弾を大きな期待して読んだ・・・結論としてはほぼ満足なのだが、ハードルを上げ過ぎてはいけないという自戒にもなった。今回は死刑制度の是非を軸にして、重犯罪被害者家族と加害者家族にスポットを当てたストーリーで、意義深い会話に考えさせられつつも、少々疲れるのも事実。重いテーマでもエンタメ色を巧みに織り込む中山さんらしさは感じたものの、前作ほどの意外性がなかったのが残念。(この手の作品は薬丸岳さんの方が上手い?)とは言え、第3弾も書いて欲しい!2017/10/13
sayan
310
思えば2017年の初読みは法服の王国だった。本書をミステリーではなく倫理観を問い合う思想小説として個人的には、興味深く読んだ。例えば、イタリアの法学者チェーザレ・ベッカリーアを引用して社会契約論を通じて死刑を論じ、その反論としてホッブスとカントを持ち出す議論が展開される。その議論の推進力と結論は、実は、「国の政治体制と国民感情によって形成される」という部分は、非常にリアリティがあった。そのように感じるのも、現在、同様の構造を持つアジェンダに関わっているせいか。著者の作品、他も色々多数あるので読んでみたい。2017/12/30
きいたん
283
またもや難しい問題にぶち当たってしまった。中山七里が今回ミステリーを通して私達に提起するのは死刑制度。死刑廃止の国が多い中、死刑を制度化している日本。死刑は是か?非か?戦後大切にされてきた加害者の人権。それとは逆に蔑ろにされている被害者の人権。そして犯罪の6割が再犯という刑務所の矯正能力の低さ。罪を償おうとする者と罪とすら思わない者。どうすれば良いかはわからないがこのままではダメだということはわかる。渡瀬と岬検事のカリスマ性を十分に味わいながらミステリーを堪能し、司法制度について考えさせられた読書だった。2017/09/02
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