出版社内容情報
買収した米原子炉メーカーの減損で、今や瀕死の東芝。歴代経営者の隠蔽工作と国策に乗ったキーマンの動向を、徹底取材で暴く決定版。
内容説明
二〇〇六年、米原発メーカー・ウエスチングハウス買収をきっかけに、解体の危機へと追い込まれた東芝。経産省の思惑、国策にすがる幹部、暴走する原子力事業部員の姿を、社内極秘資料を元にあますところなく描く。『日経ビジネス』在籍時代からスクープを連発した、第一人者によるノンフィクション決定版。
目次
プロローグ そこに悪意はあったか
第1章 原子力ルネサンス
第2章 東日本大震災
第3章 粉飾決算
第4章 破滅への道程
第5章 原発ビジネスの終焉
第6章 東芝が消える日
エピローグ サラリーマン全体主義の限界
著者等紹介
大西康之[オオニシヤスユキ]
1965年生まれ。愛知県出身。1988年、早稲田大学法学部卒、日本経済新聞社入社。1998年、欧州総局(ロンドン)、日本経済新聞編集委員、日経ビジネス編集委員などを経て2016年4月に独立(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キク
64
日本を代表する企業だった東芝は今、本社を安く買い叩かれ移転先も未定だ。家電も医療機器も映像も半導体メモリも売ってしまった。ただ、原子力事業だけが残り、福島の後始末をする会社になっている。本体を未売しようとしても、もの言う株主達が現状の株価での売却を承認しない。自らの行く末すら、自分では決められない会社になってしまった。その要因はなんだったのか?「東電の正妻」や「経産省の子会社」と言われるほど原子力に入れ込み、その政治力で東芝から経団連会長を誕生させるためだった。これが嫌味や冗談じゃないって、なんなら喜劇だ2023/03/03
TATA
45
足元まだ収束しているとは言い難い東芝の凋落ぶりを書き記した一冊。私もサラリーマンなのでねというのはあるが、かなり筆者の書き方がキツい。記者の方なので勧善懲悪のストーリー仕立てで書きたがるのは仕方ないけど、東芝のやることなすことすべて悪し様に解釈している。そう考えれば経営者というのも難儀な役割だ。原子力産業への先見の明がなかったことは認めるが、あまりに不幸な出来事と怠慢、能力不足が重なったのだと。まったく、出世の延長で経営者なんかなるものじゃない。もうそんな時代じゃないということ。2018/06/05
糜竺(びじく)
24
トップが無能。「会社のため」という名目で良心を押し殺した社員も結局同罪。だけど、東芝のようなことは、普通にあるんじゃないかな。2021/04/28
すくすく
22
東芝が粉飾決算に手を染めていく経緯を当時のメールなども併せて当時の社内の状況を詳細に浮かび上がらせている。詳細は割愛するが、監査法人対策への幹部向けお伺いメールやパワハラめいた「チャレンジ」には吐き気すら催す。会社のため、昇進のため全てを捧げ思考停止する社長以下社員たち。それは、事象の大小はあれど自社においても起きている事柄であり、著者の言う「サラリーマン全体主義」が今でもしぶとく生きている実感があるためだろう。並行して読んでいる日立のことは対比にはならない、同じことが起きていてもおかしくない。2023/03/11
coolflat
22
東芝崩壊をもたらした最大の要因は何か。06年に約6600億円を投じて買収したウェスティングハウスを核とする原発事業の不振である。原発事業の不振を覆い隠すために、東芝は総出で粉飾決算を行った。なぜ東芝は粉飾決算を行わなければならなかったのか。それは原発事業を継続するためだ。即ち、原発輸出という国策である。その国策を進めた二人の人物がいる。田窪昭寛(東芝原子力事業部)と今井尚哉(経産省、現首相秘書官)。東芝を崩壊に導いた主犯である。名門企業東芝を吹き飛ばしたのは、二人の主犯が進める原発輸出という国策であった。2018/01/06