夫・車谷長吉

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 277p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784163906478
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0095

出版社内容情報

十一通の絵手紙をもらったのが最初だった。直木賞受賞、強迫神経症、お遍路、不意の死別。異色の私小説作家を支えぬいた詩人の回想。この世のみちづれとなって――



十一通の絵手紙をもらったのが最初だった。

直木賞受賞、強迫神経症、お遍路、不意の死別。

異色の私小説作家を支えぬいた詩人の回想。





【本文より】



長吉は二階の書斎で原稿を書き上げると、それを両手にもって階段を降りてきた。

「順子さん、原稿読んでください」とうれしそうな声をだして私の書斎をのぞく。

私は何をしていても手をやすめて、立ち上がる。食卓に新聞紙を敷き、

その上にワープロのインキの匂いのする原稿を載せて、読ませてもらう。

(中略)

それは私たちのいちばん大切な時間になった。原稿が汚れないように

新聞紙を敷くことも、二十年来変わらなかった。相手が読んでいる間中、

かしこまって側にいるのだった。緊張して、うれしく、怖いような

生の時間だった。いまは至福の時間だったといえる。 (本文より)

高橋 順子[タカハシ ジュンコ]

内容説明

十一通の絵手紙をもらったのが最初だった。直木賞受賞、強迫神経症、お遍路、不意の死別。異色の私小説作家を支えぬいた詩人の回想。

目次

1(絵手紙;出会いまで;『鹽壷の匙』のころ;結婚まで)
2(千駄木;宴;低迷運;狂気)
3(『赤目四十八瀧心中未遂』のころ;直木賞受賞・光と影;終の住処;けったいな文士)
4(南半球一周航海へ;初恋の人のことなど;お遍路)
5(異変;永訣)
6(墨書展)

著者等紹介

高橋順子[タカハシジュンコ]
1944年、千葉県飯岡町(現・旭市)生まれ。千葉県立匝瑳高等学校卒業。東京大学文学部フランス文学科卒業。青土社などの出版社に勤務。1987~98年、書肆とい主宰。98~2005年、法政大学日本文学科非常勤講師。1993年11月、作家車谷長吉と結婚。86年『花まいらせず』で現代詩女流賞、90年『幸福な葉っぱ』で現代詩花椿賞、97年『時の雨』で読売文学賞、2000年『貧乏な椅子』で丸山豊記念現代詩賞、14年『海へ』で藤村記念歴程賞、三好達治賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

この商品が入っている本棚

1 ~ 1件/全1件

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

あすなろ

87
赤目四十八瀧心中未遂を書き上げたときから精子が出なくなった。ということはあれが俺の子供だったのだな、とひとりごちた車谷長吉を描いた奥様の作。赤目も凄い作品だと当時思い、これを描いた人はどういう人かと思ったものだが、こういう人だということが赤裸々に判る本。激烈な人で激烈な生き様で激烈な死に夫婦ならではの迫り方をする。特に後半部分の筆致が読み易い。興味があり読了しました。あと、個人的には、赤目の出版社変更のことは知らなく、興味深かったです。2017/08/29

どんぐり

79
私小説作家の車谷長吉がこの世を去って2年半が過ぎた。そして、出るべきものが出たという感じがする詩人・高野順子が書いた回想記。二人の出会いは、詩人・高野順子への長吉の恋文ともいうべき十一通の絵手紙、以来、25年余りの結婚生活。この間、長吉の強迫神経症と狂気、筆禍事件などがあって順風満帆とはいかない。高野順子の『時の雨』と同様、この本には長吉という異色の小説家へのリスペクトがあることは間違いない。2018/01/25

harass

75
2015年に亡くなった私小説作家の妻が書く作家の思い出。1988年、著者に突然に送られてきた月一度の絵はがきから始まる。著者が自費出版した詩に感動したということだった。当時、著者と車谷は44歳と43歳。彼のエッセイなどで語られてきた出来事がすぐそばにいた妻からの視点で語られる。強迫神経症や筆禍事件、そして晩年の様子やあっけない死に方。個人的に車谷の本はよく読んでいたせいもあり、いや凄いものを読ませてもらった。車谷ファンであれば必読。彼はワープロで執筆していたことに驚き。手書きじゃなかったのね。2017/12/14

こばまり

60
あれは「鹽壺」か「赤目」か、またはその両方か。日頃ぼんやりした性質故、読了後暫く物故作家と信じて疑わず、やがて同時代を生きる人と知り驚愕した記憶がある。夫人による道行の記は、こんな男の人に見込まれたら大変だと嘆息する一方で、これぞソウルメイトという思いもする。2019/06/17

nonpono

53
読みたかった本を早朝に読む。車谷さんってやはり、赤目の人。あの映画の寺山しのぶのアヤちゃんの美しさ、鮮烈さ。わたしの中では焼き鳥の串を刺す人だが、慶応卒なんですね。奥様は東大卒の詩人。四十路で結婚。クリエーター同士が同じ屋根の下に住む豊かさと大変さがわかる。夫婦で四国巡礼がすてき。わたしの夢だから。強迫神経症の凄まじさ。南半球への船旅も良いな。平易な言葉が持つ説得力は難儀な人生の果てのだろうか。読んでない作品も読みたくなる。車谷長吉の文学と厄介さに、再びひかれた。やはり、カリスマを支えるパートナーは凄い2024/06/21

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/11737587
  • ご注意事項

最近チェックした商品